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社会派講談の旗手 神田香織(後編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」第7回
- 講談

『はだしのゲン』も並ぶ自宅の書棚の前で
一時期、絶滅危惧種とまで言われるも、現在、東西合わせて120名を超えるまでになった講釈師。江戸から明治、大正、昭和と、主に男性が読み継いできた芸であったが、平成、令和と時代を経て、女性目線による女性の講談が世に送り出されてきた。その時、講釈師は何を考え、何を読んできたのか。第一線で活躍する女性講釈師に尋ねてみた。(神田香織先生の前編/中編/後編のうちの後編)
澄和Futurist賞受賞に寄せる思い
―今回、「澄和Futurist賞」を受賞して、どんなことを思われましたか。
香織 最初聞いた時は、「え! 私でいいんですか?」という感じでした。吉永小百合さんや山田洋次監督、坂本龍一さんとか、錚々たる凄い人たちが受賞してきていますから。長年『はだしのゲン』をはじめ、『チェルノブイリの祈り』といった、テーマ性のある話に地道に長年取り組んできたところが評価されたのだと思います。
―嬉しかったですか。
香織 驚きましたね。見てくれている人は見てくれているんだなと思いました。それが嬉しかったですね。国内でも軍拡や防衛費が増大してきて、「新しい戦前」という言葉を用いたのはタモリさんでしたが、そういうきな臭さを感じてきている人が多いのではないでしょうか。今一度、戦争を振り返ってみましょうよという動きが求められているのかなとも思いました。
一昨年に『はだしのゲン』が広島の平和ノートから削除されるという事件があって、私はそれに「違う!これを削除してはダメでしょう!」と声を挙げましたが、同じように思った人がいたということでしょうね。漫画もそれがきっかけで15倍売れたそうですし、全巻買って子どもや孫に渡すという人もいたりして、それぐらいの危機感を世の中でも感じ取っているのだと思います。平和ノートから削除、ついにそこまで来ちゃったのかという危機感を澄和の方たちも思ったのではないでしょうか。
―やはり、平和ノートからの削除というニュースを聞いて、憤りを覚えましたか。
香織 大きな声を挙げてしまいました。それですぐに行動をとって、2月16日に発表されて、3月14日には広島へ乗り込んでいきましたから。弁護士会館で教科書ネットを運営している先生たちが企画をしてくれて、「こんなに凄い作品なんだ」「こんなにインパクトのある作品をなくしていいんですか」という風に語って、広島にいる講談教室の生徒さんも意識の高い人で、司会をやってくれたりして、盛り上がりましたね。
その後も7月のサミット前にも広島でダイジェスト版を金平茂紀さんと一緒にやりましたし、広島の良心と言われている平岡元市長さんとかが大勢来てくださって、「サミットで本当にやることは違う。本当の広島の良心はここにあるんだ」という思いで開きました。