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社会派講談の旗手 神田香織(後編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」第7回

社会派講談の旗手 神田香織(後編)

『はだしのゲン』も並ぶ自宅の書棚の前で

瀧口 雅仁

執筆者

瀧口 雅仁

執筆者プロフィール

澄和Futurist賞受賞に寄せる思い

香織 最初聞いた時は、「え! 私でいいんですか?」という感じでした。吉永小百合さんや山田洋次監督、坂本龍一さんとか、錚々たる凄い人たちが受賞してきていますから。長年『はだしのゲン』をはじめ、『チェルノブイリの祈り』といった、テーマ性のある話に地道に長年取り組んできたところが評価されたのだと思います。

香織 驚きましたね。見てくれている人は見てくれているんだなと思いました。それが嬉しかったですね。国内でも軍拡や防衛費が増大してきて、「新しい戦前」という言葉を用いたのはタモリさんでしたが、そういうきな臭さを感じてきている人が多いのではないでしょうか。今一度、戦争を振り返ってみましょうよという動きが求められているのかなとも思いました。

 一昨年に『はだしのゲン』が広島の平和ノートから削除されるという事件があって、私はそれに「違う!これを削除してはダメでしょう!」と声を挙げましたが、同じように思った人がいたということでしょうね。漫画もそれがきっかけで15倍売れたそうですし、全巻買って子どもや孫に渡すという人もいたりして、それぐらいの危機感を世の中でも感じ取っているのだと思います。平和ノートから削除、ついにそこまで来ちゃったのかという危機感を澄和の方たちも思ったのではないでしょうか。

香織 大きな声を挙げてしまいました。それですぐに行動をとって、2月16日に発表されて、3月14日には広島へ乗り込んでいきましたから。弁護士会館で教科書ネットを運営している先生たちが企画をしてくれて、「こんなに凄い作品なんだ」「こんなにインパクトのある作品をなくしていいんですか」という風に語って、広島にいる講談教室の生徒さんも意識の高い人で、司会をやってくれたりして、盛り上がりましたね。

 その後も7月のサミット前にも広島でダイジェスト版を金平茂紀さんと一緒にやりましたし、広島の良心と言われている平岡元市長さんとかが大勢来てくださって、「サミットで本当にやることは違う。本当の広島の良心はここにあるんだ」という思いで開きました。