題・ハード

「マクラになるかも知れない話」 第四回

プロレスラーがヤー!

 噺家は、季節感を大切にする。

 ひとたび高座に上がれば、夏には夏の、秋には秋の噺をする。あえて夏に冬の情景が浮かぶような噺をして涼んでもらったりなんかもするが、これは基本として皆が噺の季節感を大事にしているからできるものだ。

 また、『長屋の花見』のような噺は「ちょっと暖かくなってきたかな? いや、まだまだ冷えるなあ」というような、ごく短い時期にするものだと教えていただいたこともある。

 実際に桜が咲いてからでは、ちょっと野暮なんだそうな。

 だからこそ逆に……とまあ、結局自由にしていいのだが、季節感を大切にしていることは確かだ。ならば、エッセイも季節感を大切にしたお題で、と考えてくれているのだろう。

 でも、私ならば――。

 私が駆け出しの二ツ目噺家に「エッセイを書かせよう。さあお題案を送ろう」となったら、何か妙なものを混ぜたくなる。そして駆け出しの二ツ目噺家を困らせてやりたい。

 たとえば「アルゼンチンバックブリーカー」だ。プロレスラーさんがヤー!ってやるあれだ。

○○亭□□ 様

いつもお世話になっております。
11月のお題案をお送りいたします。
どうぞよろしくお願いいたします。

「初冬、晩秋、深秋、紅葉、時雨、木枯らし、小春日和、アルゼンチンバックブリーカー、落ち葉、山茶花、柊の花、八手の花、焚き火、酉の市、十日夜…」


 どうですか? ワクワクしてきたでしょう。

 ババ抜きで手札内の一枚だけを高い位置にして、さあどれを選ぶのか、と迫られているような感覚。それはジョーカーだ! そう本能が告げているが、飛び付かないではいられない!

 悩むだろうな~。

 このままアルゼンチンバックブリーカーについて熱く語りたいが、残念ながら私はアルゼンチンバックブリーカーのことをよく知らない。だって上記のアルゼンチンバックブリーカーの説明が「プロレスラーさんがヤー!ってやるあれだ」である。

 どんな間抜けが書いた文章かと思った。

 まあこんな間抜けだが。