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日常を鮮やかに描く言葉の力 神田茜(後編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第23回

日常を鮮やかに描く言葉の力 神田茜(後編)

自作の変わり種張り扇を手に(墨亭にて)

瀧口 雅仁

執筆者

瀧口 雅仁

執筆者プロフィール

神田茜の言葉の行方

―― 山陽一門の多くは落語芸術協会に所属していますが、茜さんは落語協会にいるのはどうしてですか。

 芸協にはお姉さんたちが既に入っていて、私も一緒に芸協にという話がありました。でも当時、前座からやるなら入れると言われて、二ツ目になってしばらく経っていましたし、新しいことをやりたかったので、お断りしたんです。そうしたら、(春風亭)小朝師匠が私の高座を聴きにきてくれて、どこにも入っていないんなら、落語協会に入らない?と言われて、トントン拍子に決まったんです。

 その後、林家たい平一門に移るのですが、でも落語界もまだその頃は男性社会なので、女性の新作講談はなかなか受け入れてもらえないみたいなんです。若くて可愛い人はあれですが、私自身も、どこか大事にされていないような……。寄席の出番もなかなか来ないですし、それは今も変わりません。思いきって、フリーになろうかという気持ちも強くなってきています。その方が楽なような気もするんです。

―― 本もたくさんお出しになっていますが、最近はいかがですか。

 出版業界も厳しいようで、編集者からいい返事が来ないようになりました。大正時代の女子学生を主人公にした小説も、もう何度も推敲したぐらいです。苦労して書いたので、ぜひ出版したいんですが。今はコラムを書くぐらいです。

―― 神田茜、この一冊!を選ぶとしたら、どの著書になりますか。

 『母のあしあと』です。自分の持てる力を全部出した作品です。

―― 確かに、名作ですね。最近では『下北沢であの日の君と待ち合わせ』も面白く、話に登場する、今は移転した「アンゼリカ」というパン屋さんもテレビで取り上げられていました。

 あの話も実話が入っていて、読んでもらいたい作品です。

―― 個人的には手品が好きなので、『一生に一度のこの恋にタネも仕掛けもございません』。

 元は『オレンジシルク』といった話です。『ぼくの守る星』は、毎年のように入試問題に使われています。試験が終わると問題用紙が送られてくるんですが、難しくて、自分でも解けません(笑)

―― 最新作が待ち遠しいですね。