日常を鮮やかに描く言葉の力 神田茜(中編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第22回
- 講談
瀧口 雅仁
2025/12/30
前座になって3年目、神田ふづきの頃(神田茜・提供)
一時期、絶滅危惧種とまで言われるも、現在、東西合わせて120名を超えるまでになった講釈師。江戸から明治、大正、昭和と、主に男性が読み継いできた芸であったが、平成、令和と時代を経て、女性目線による女性の講談が世に送り出されてきた。その時、講釈師は何を考え、何を読んできたのか。第一線で活躍する女性講釈師に尋ねてみた。〈神田茜(かんだあかね)先生の前編/中編/後編のうちの中編〉
〈前編〉はこちら
講釈師・神田茜の転機
― 二ツ目に昇進して「茜」と改名しました。神田の、特に女性講釈師は名前を変えなくていいように、師匠が名前を考えていると聞いたことがありますが。
茜 師匠が「緑」になりなさいと。前にもその名前の先輩がいたんです。でも私が緑色が好きではなくて、何か他に色はないかなと探している時に、茜色が好きだったので、「茜」としました。
― お似合いの名前だと思っています。字面もいいですし。二ツ目になって、変わりましたか。
茜 誰かに喜んでもらいたくて講釈師になったのに、みなさん渋い顔をしているばかりで、話も聴いてもらえなくて、お客様の笑顔を見たかったですね。それで限界を感じて、辞めようと思いました。でも辞める前に四谷倶楽部で勉強会の予定があったんです。
― 懐かしい会場ですね。どんな演目を読んだんですか。
茜 その時は、自分の失敗談を講談口調ではなくて、自分の言葉で話しました。バイトで失敗した話を普通の言葉で読んだんです。
― 最初に作った講談はなんですか?
茜 化粧品のセールスの話で『7月28日に生まれて』です。そうしたら、それを聴いたお客さんが笑ってくれて、それで嬉しくなって、喜んでくれるだけで嬉しくなって、それで失敗談を元にして作りはじめました。そうしたら、落語家さんと一緒になる会で、面白いと噂になったのか、三遊亭円丈師匠に声を掛けてもらい、ル・ピリエで開いていた「応用落語」に呼んでもらえるようになったんです。
令和3年に鬼籍に入った三遊亭円丈は自分が行っている新作落語の活動を広めるためにも、新作をやる仲間を増やさなければならないと、夢月亭清麿や林家しん平、三遊亭歌之介(現・四代目 三遊亭圓歌)を仲間に、渋谷ジァン・ジァンで「実験落語」を開いた。
その後、会場を池袋の文芸坐ル・ピリエに移し、春風亭昇太や三遊亭白鳥、柳家喬太郎、林家彦いちたちをメンバーに加えて「応用落語」を開催。そこに神田茜も顔を連ねたわけである。
― 実験的な新作落語が並ぶ中、反応はいかがでしたか。
茜 ガンガン受けるんです。誰か後ろにいるんじゃないかと思って、振り返ったぐらいです(笑)。講談のお客さんだと受けないのに、違うなと思いました。それで「応用落語」用に、次々作っていったんですが、講談と落語のお客さんだと温度差があって、バランスを取るのが難しくて、精神的にも大変でした。でも、作って、やるしかない。そんなことをウダウダと考えるばかりで、お酒を飲んで気を紛らわせて、半分アル中みたいになっていました。
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