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日常を鮮やかに描く言葉の力 神田茜(後編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第23回

講談界と神田茜の「これから」

―― これからの講談界はどうなっていくと思いますか。

 わからないですね。お客さんは増えています。(神田)伯山さんのおかげです。伯山さんが企画している「はじめての講談会」に出演者させてもらったんですが、女性のお客さんも増えていて、だからこそ新作をメインにやるという人がもっと出てきて欲しいですね。講談イコール古典というイメージがまだまだ強いと思っています。

―― では、これからの神田茜はどうなっていくと思いますか。

 どうしたらいいんでしょうね。やはりどこかでフリーになりたいという思いがあります。ただ、講談をやっていて、最近は楽しくなってきました。「はじめての講談会」の時に『初恋エンマ』と『でもね』を読んだんですが、ものすごく笑ってもらえたんです。それが嬉しかった。

 ヘタクソだったのが、40年やってくると、自分の読みで喜ばせることができるようになった。技術的なものが自分に身に付いてきて、それで自由になれた。だから今は、これからどうしようかと考え中といったところですかね。

―― それは神田茜の“味”が出てきたということでしょうか。

 ヘタクソの技術が自分の技術となって、それが個性として身に付いたと言えばいいでしょうか。自分でも違和感を覚えることがなくなりました。これもこの間のことですが、朗読の会で、本を朗読しただけで、それをじっくり聴いてもらえたんです。読んでいても苦とは思いませんでした。

―― 講釈師ばかりでなく、落語家でも、茜さんの作品を演じる人が増えてきました。

 若い人がやってくれるようになって、ありがたいです。『スキスキ金右衛門さま』は(柳亭)こみちさんが、(林家)きよ彦さんは『でもね』を。この間、真打になった(林家)なな子ちゃんにはトリ用にと『あの頃の夢』を教えました。教えることでネタも残るし、自分の作ったネタが演じられていくのは嬉しいです。

―― 宝井琴星先生も、自分の作品を後輩たちに伝えています。みんなにやってもらわないと、古典になっていかないと話していました。

 そうした意味でも、これからも私にできることがあるのかも知れません。これからが私が生きやすい時代になるような気もします。まあ、まわりのことはあまり気にせず、高座をもっと楽しみたいと思っています。

(以上、敬称略)

神田茜X(旧Twitter)

「きょうのせつなかったこと」(ブログ)

(了)