青の深さが教えてくれたこと

シリーズ「思い出の味」 第18回

海に呼ばれ、風に背中を押され

 しかし、島の文化は単純ではない。ウミガメは小笠原の伝統食だ。厳しい捕獲制限のもと、島の暮らしと共に続いてきた命の循環。その一皿には、島の時間が、祈りが、生活の重みが静かに溶けていた。

 私はその事実を知り、胸の奥にひとつの答えが生まれた。

 いただくことは、生きること。
 生きることは、つながること。

 あの夜に食べた亀の煮込みは、今でも私の心のどこかで静かに湯気を立てている。味の記憶は、ただ舌に残るものではない。海の匂い、子どもたちの笑い声、月の光、命の震え ―― すべてが混ざり合い、ひとつの“思い出の味”になる。

 私はこれからも島へ行くだろう。
 海に呼ばれ、風に背中を押されながら。

 そしていつかまた、新しい「思い出の味」に出会うのだと思う。

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(了)