NEW

古典? 新作? 浪曲シートン動物記

「浪曲案内 連続読み」 第6回

古典? 新作? 浪曲シートン動物記

シートンとの出会いから始まる、浪曲の新たな挑戦!(画:原えつお)

東家 一太郎

執筆者

東家 一太郎

執筆者プロフィール

浪曲号は両輪で未来に向かう

 浪曲の演目(ネタ)には台本があります。書き遺されたものもあれば、昔の師匠の中には、頭に入っていて書き遺していない方もいます。

 口伝(口頭、口移し)の稽古や、師匠の舞台を何回も見聞きしているうちに覚えてしまうこともあるようです。

 しかし、その方が話の筋を忘れてしまったり、お亡くなりになると、演目も消えてしまいます。人と芸とともに演目も消えてしまうことに美学やロマンはありますが、紙や録音で遺しておかないとモッタイナイ!

 幸い、浪曲は今までの連載でお話ししたようにレコードやラジオで一世を風靡した歴史がありますので、音源は他の芸能と比べても多いです。

 また、オープンリールのテープレコーダーが発売された当初から、舞台や稽古の録音はされており、貴重な音源も残っています。テープを聴いて書き起こせばOKですが、消えていった演目も沢山あると思います。

 浪曲の演目は、基本的に師匠から弟子に伝えられるものです。これを仮に「古典浪曲」と云うとしますと、新たに自分で台本を書いたり、他人(作家さんなど)に書いてもらった演目を「新作浪曲」と云います。

 師匠から「やっていいよ」といただいた演目を、舞台でお客様にお楽しみいただきながら、お家芸、たとえば東家の十八番ネタとして磨き、後世に遺していくことが、浪曲師としての第一の使命です。

 ですが、「浪曲? 聴いたことない」という方がほとんどの今、聴いていただく方に合わせて、興味を持っていただける内容の浪曲をやる必要が出てきます。

 つまり、新作浪曲と古典浪曲の両輪で、浪曲号は未来に向かって進みます。

 どんな物語でも節と三味線で表現すれば浪曲になりますが、「浪曲の味」というのが大事です。