百済観音
「くだらな観音菩薩」 第1回
- 落語
林家 きく麿
2025/05/16
いないのに感じる存在
久しぶりに法隆寺に行ったのは、いつだったかな? 確か前妻が奈良の生まれだったので、彼女の実家に一緒に帰ったときに行ったんだ。そうそう。その頃はすっかり仏像好きになっていて、中学生以来の法隆寺にドキドキ・ワクワクして行きました。
門の仁王像(におうぞう)からワクワクして、五重塔を見上げてヘボヘボして、金堂へ。釈迦三尊像(しゃかさんぞんぞう)を前にして、ん? なんか違和感……。
「あれ? 百済観音っていたよなぁ?」
「どこ行っちゃったの? ここの端っこに、いたはずだよなぁ?」
まだ大宝蔵院の存在を知らなかった私は、何もない金堂の隅に百済観音様の存在を感じていました。いない場所に存在を感じること、ありますよね。
たとえば、可愛がっていたワンちゃん・ネコちゃんが亡くなって、悲しみに暮れているとき、ふとソファを見ると「あぁ、いつもここに寝ていたなぁ」と、もうそこにはいないのに、いつもいた場所や風景、空間に存在を感じる。これも生(これ「せい」ね、「なま」と読まないでね)なのかな。
もう何もない場所に生きていた証(あかし)があることに、不思議な気持ちになりますよね、ね。
あ、そういえば、紙切りの大師匠、林家正楽師匠が亡くなったとき、鈴本演芸場の楽屋のテレビの前の座布団、師匠はいつもその場所に座っていらしたので、そこに正楽師匠を感じて、胸がキュッとなったことがあります。
この話を同期の噺家仲間と飲んでいるときに話したら、「おい! 正楽師匠とペットを一緒にしちゃダメだよ!!」と怒られたのを思い出しました。
心が震える
お話は戻ります。金堂を後にして、大宝蔵院に辿り着いた私。「何じゃ、この立派な建物は!」「いつできたの?」「わー、すご~い!」「なんて素敵な空間なんだ!」と、心の中で小躍りをしつつ鑑賞をしていると、左右に分かれる院をつなぐ通路に差し掛かりました。
そこになんと! 百済観音様がいらしたのです。
ぐわーー!
ぎょえ~!
心に響く、百済観音様の素晴らしさ!
心に響くって、すごいことだと思うんです。常に思っているのは、人の心を動かせるのは、心でしかないと。絵を観て、彫刻を観て、映画を見て、仏像を観て、落語を聴いて感動する。
この感動って、「心が震える」ってことですよね。まさに琴線に触れるってやつです。
百済観音様の立ち姿、優しいお顔立ち。この像を作った人は、よほど多くの人たちを救ってあげたかったんだな。この仏様に救いを求めたんだ! 作者の気持ちが私の琴線に触れ、拝観料の高さも気にならないほどの金銭感覚にも触れてしまいました!
いま読まれています!
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第20回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(後編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/12/01
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第19回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(中編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/30
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第18回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/29
「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第6回
〈書評〉 8番出口 (川村元気 著)
~ゲームと小説が重なる不思議な体験
笑福亭 茶光
2025/12/01
「テーマをもらえば考えます」 第4回
キウイフルーツ
~うん、凄いね、熟成! 熟成が凄いんだね!!
三遊亭 天どん
2025/11/30
鈴々舎馬風一門 入門物語 第12回
青春の終わりに入門。青春の始まりの入門 (後編)
~楽屋で学んだ人生のLUCK GO!
柳家 獅堂
2025/06/05
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
「オチ研究会 ~なぜこのサゲはウケないのか?」 第4回
権助魚、壺算、明烏
~「帰りたい」って、泣いてたよね?
林家 はな平
2025/08/06
「コソメキネマ」 第七回
朝のドラマ
~髙石あかりさん主演の『ベイビーわるきゅーれ』シリーズをご紹介!
港家 小そめ
2025/11/23
「すずめのさえずり」 第五回
ドーピングと芸名 ~志ん雀の由来~
~切実さと爆笑で綴られる、芸名誕生秘話
古今亭 志ん雀
2025/11/26
「テーマをもらえば考えます」 第4回
キウイフルーツ
~うん、凄いね、熟成! 熟成が凄いんだね!!
三遊亭 天どん
2025/11/30
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第19回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(中編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/30
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第18回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/29
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第20回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(後編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/12/01
「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第6回
〈書評〉 8番出口 (川村元気 著)
~ゲームと小説が重なる不思議な体験
笑福亭 茶光
2025/12/01
鈴々舎馬風一門 入門物語 第12回
青春の終わりに入門。青春の始まりの入門 (後編)
~楽屋で学んだ人生のLUCK GO!
柳家 獅堂
2025/06/05
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
「オチ研究会 ~なぜこのサゲはウケないのか?」 第4回
権助魚、壺算、明烏
~「帰りたい」って、泣いてたよね?
林家 はな平
2025/08/06
「テーマをもらえば考えます」 第3回
ハロウィン
~ご祝儀くれなきゃ、イタズラするぞー
三遊亭 天どん
2025/10/31
「ずいひつかつどお」 第6回
きょうなにようび
~ブラックフライデーで、ハッピーハッピー!
立川 談吉
2025/11/29
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
「すずめのさえずり」 第五回
ドーピングと芸名 ~志ん雀の由来~
~切実さと爆笑で綴られる、芸名誕生秘話
古今亭 志ん雀
2025/11/26
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第18回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/29
「テーマをもらえば考えます」 第4回
キウイフルーツ
~うん、凄いね、熟成! 熟成が凄いんだね!!
三遊亭 天どん
2025/11/30
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第19回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(中編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/30
「ずいひつかつどお」 第6回
きょうなにようび
~ブラックフライデーで、ハッピーハッピー!
立川 談吉
2025/11/29
「芸人本書く派列伝 クラシック」 第7回
〈書評〉 芸談 あばらかべっそん (桂文楽 著)
~名人の素顔は、磨かれた語りの行間に宿る
杉江 松恋
2025/11/28
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第7回
百花繚乱! 10人組の落語家ユニット「芸協カデンツァ」がやって来た【前編】
~世代を超えた多種多様、香味全開のおもしろユニット!
服部 拓也
2025/11/20
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第20回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(後編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/12/01
月刊「シン・道楽亭コラム」 第7回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト
~すべては菊太楼師匠との駄話、駄飲みから始まった
シン・道楽亭
2025/11/13
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第7回
ビールの秋、日本酒の秋、わたしの美が深まる秋
~浪曲師の日記が、ここまで笑えていいんですか!
東家 千春
2025/11/03
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「かけはしのしゅんのはなし」 第6回
大会後のご褒美は、魅惑のナポレターナとプロシュート!
~11月20日は、ピザに恋する日!
春風亭 かけ橋
2025/11/18
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
「ラルテの、てんてこ舞い」 第5回
雀々が残した大提灯
~今もたくさんの人に愛される桂雀々師匠
ラルテ
2025/11/10
「講談最前線」 第10回
2025年11月の最前線 (聴講記:神田松麻呂・神田鯉花 連続読み、神田春陽の会)
~リレー講談「寛永宮本武蔵伝」と、緩急自在の「大岡政談」
瀧口 雅仁
2025/11/17
「講談最前線」 第8回
2025年9月の最前線 【後編】 (宝井小琴の二ツ目昇進、神田鯉花の結婚/講談入門② ~入門書編1)
~講談界の慶事と、初心者におススメの一冊
瀧口 雅仁
2025/09/14
入船亭扇太の「お恐れながら申し上げます」 第3回
番頭色々
~「本当にやって良かった」 に感謝を込めて
入船亭 扇太
2025/11/11
編集部のオススメ
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第4回
上方落語大会議「なんぼでなんぼ」
~苛酷な仕事、ギャラなんぼやったら行く?
桂 三四郎
2025/10/24
「マクラになるかも知れない話」 第三回
となりは鼻うがいをする人ぞ
~ねぇママ、パパは何をしているの?
三遊亭 萬都
2025/10/22
「エッセイ的な何か」 第5回
10/9は、アメリカンドッグの日 →兄さんに呼び出された男の困惑
~その男は『ドッグ』と呼ばれた!
三笑亭 夢丸
2025/10/21
「かけはしのしゅんのはなし」 第5回
スポーツの秋! 落語家がサーフパンツで舞台に立つ日
~筋肉は裏切らないが、笑いはたまに裏切る?
春風亭 かけ橋
2025/10/18
「くだらな観音菩薩」 第6回
鑑真和上
~そう、諦めちゃあいけないんだ
林家 きく麿
2025/10/16
「令和らくご改造計画」
第三話 「内輪ノリ」
~またも前座が楽屋を混乱に陥れる!
三遊亭 ごはんつぶ
2025/10/12
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第6回
ビール飲み干し、そしてわたしに秋が来る
~時にヒリヒリ、時に爆笑の舞台裏!
東家 千春
2025/10/03