NEW
流麗にして弁舌 一龍斎貞鏡 (後編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第3回
- 連載
- 講談

父 八代目貞山との楽屋でのツーショット(一龍斎貞鏡・提供)
一時期、絶滅危惧種とまで言われるも、現在、東西合わせて120名を超えるまでになった講釈師。江戸から明治、大正、昭和と、主に男性が読み継いできた芸であったが、平成、令和と時代を経て、女性目線による女性の講談が世に送り出されてきた。その時、講釈師は何を考え、何を読んできたのか。第一線で活躍する女性講釈師に尋ねてみた。(一龍斎貞鏡先生の前編/中編/後編のうちの後編)
修羅場の精神
――大好きなお酒は飲んでいますか。
貞鏡 子どものことがあるので飲んでません。でも、夫は目の前で飲むんです。一生モノの怨みです(笑)。
――令和4年度の芸術祭新人賞を取ったことも、貞鏡さんの講釈師人生の中での、一つのターニングポイントになったのではないでしょうか。
貞鏡 私は賞レースというものが苦手で、人と比べられると萎縮してしまうんです。なので受賞のお知らせの電話をいただいた時は涙がとめどなくあふれ、真っ先に師匠の位牌に手を合わせて、「おかげさまで、師匠が大切にされていた修羅場で賞を賜りました。これからも大切にしてまいります」。そう誓いました。
先にお話しした『修羅場勉強会』も師匠を亡くしてから始めた会ですし、改めて、命を全うするまで続けていこうと心に決めました。
――今後の、その時その時の貞鏡さんの立ち位置なりを考えさせてくれるのも、八代目貞山先生が遺された修羅場でもありますね。
貞鏡 そうかも知れません。前座の時と真打になってからの読みは違わなければなりませんし、この間も琴柳先生にお稽古をつけていただいた時、「お前さんはまだ二ツ目の読み方だね。真打の読み方になるまではまだまだだ」って仰っていただきました。
――そうして厳しく言ってもらうというのは大切なことではないですか。
貞鏡 おっしゃる通りです。ご尊敬申し上げてる先生から芸の上で厳しくご指導をいただける。こんなに有難いことはありません。