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天敵
三遊亭好二郎の「座布団の片隅から」 第2回
- 連載
- 落語
ヤツの生き様の美学
しかし、パスタコーナーにマカロニサラダが本当に並んだら、それはそれで肩身が狭そうではある。
パスタとしてはパンチやボリュームに欠けていて、パスタコーナーの主役にはなれそうにない。あそこを彩るのは強者ばかりである。ペペロンチーノ、ボロネーゼ、ナポリタン……。しかも物によっては野菜までたくさん入っている。おいマカロニサラダよ。お前、パスタコーナーでもちゃんとやっていけるのか!?
そうか、まずマカロニサラダという名前が弱い気がする。何かちょっと足してみたらどうだろう。
まかないマカロニサラダ
――あまり良くない。「値下げしました!」シールが付いてそうだ。
シェフの気まぐれマカロニサラダ
――少し豪華になった気がする。意識高い系の名前が良いのかもしれない。
マカロニ・サラダ
~ひと切れの新鮮レタスと北海道産卵のマヨネーズソースを添えて
――すごい! 主役を張れそうな名前になってきた!
ただ、ここまでドーピングをしてまで戦わせる必要があるのか。結局、ヤツは主役ではなく、名脇役のポジションが似合うのかもしれない。
そもそも、そんなマカロニサラダを目の敵にしている私自身はどうなのか。翻って私の落語を考えてみると、聴く人の人生を変えるような刺激的な芸もなく、ただ軽いだけの噺でお客様の記憶に残らず消えていく……。
来る仕事は基本的に拒まずに、なんのポリシーもなく引き受け、一緒に組む落語家に合わせて、その日その日で器用貧乏に振る舞い、芸にも生き様にもこだわりがある様子を微塵も感じさせない……。
なんだ! これではまるで、私はマカロニサラダではないか。マカロニサラダよ……お前、仲間だったのか。芯のないヤツのことがちょっと好きになった。
これからは、マカロニサラダ芸人として生きていきます。
(毎月7日頃、掲載予定)