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2025年6月の最前線【前編】(軍談が今、面白い!~津の守講談会・軍談ウィーク)
「講談最前線」 第2回
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講談界の新鋭が挑む軍談の新時代
今回のこの企画について、自身にとって「軍談はライフワークであり、講釈師としての必須科目」とする宝井琴鶴は次のように話している。
「軍談道場」は、それまで個人で取り組んでいた軍談に着目して、仲間たちと一緒に取り組むきっかけとなりました。貞橘兄さんからも「偉いよね」とまず言われて、「もっと深められないか」と話していき、いきなり完成形を目指していくのではなく、軍談を自分のものとして揉んでいけないかと考え、「軍談道場」と名付けたんです。
今回の津の守での三日間は、道場で揉んできたことがベースにあります。もちろん定席と軍談道場は異なるものですが、他にも軍談に取り組んでいる人はいますし、上の人のお手本も聴きたい。ベテランの先生方が軍談をどんな感じで読むのか知りたいですし、次世代にも見てもらいたいと思って企画を出してみました。
講談界新進気鋭の神田伊織は、今回の講談ウィークの意義、そして「軍談」の魅力に関し、次のように話す。
今、あらゆる娯楽がネット等で気軽に楽しめる時代です。講談もこれまで時代に迎合するように、わかりやすく面白い、更に踏み込めば、過剰な演出で、無駄と思われる点を削ってきました。それはエンターテインメント全体の流れとも言えます。
ですが「軍談」はその真逆のところにある読み物です。言葉も難しいですし、聴き手に対する娯楽性も乏しい。とは言え、「軍談」は講談の他にはありません。恐らく落語にも芝居にもできない講談にしかない表現です。私は講談の本質を知ってもらいたく、「軍談」を今の時代の娯楽にしたいと、常々工夫して読んでいます。今の時代ならではの楽しみ方や読み方があるという可能性を信じています。
今回は『三方ヶ原軍記』の中でも、本多方が武田の武将と戦うという、あまり読まれることのない箇所を読むので、私の考える「軍談」の可能性をも感じて欲しいですね。
三日間の企画では、「軍談道場」の面々ばかりでなく、これからの講談界を背負っていくべき、確かな読みを聴かせてくれる神田菫花や、来秋の真打昇進が決定した田辺いちかといった猛者も顔を連ねているだけに目が離せない。

四代目邑井貞吉(吉弥時代)の軍談『山崎合戦』の台本(筆者・蔵)
(6月18日掲載予定の後編に続く)
―― 後編はこちら。第3回「2025年6月の最前線【後編】」