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初エッセイ ~水無月って何?
「かけはしのしゅんのはなし」 第1回
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これぞ人情!?
地元の人々から愛される、50年以上続く和菓子屋さん。コンパクトな店内のショーケースに並んでいる上生菓子。新聞を読んでいるお母さんが、この店唯一の店員さん。人情味あふれる雰囲気。水無月を注文すると、
「白砂糖と黒糖の2種類ありますが、どうしますか?」
2種類あるとは知らなかった。初めて食べるんだからオーソドックスがいいんでしょうけれども、黒糖も捨て難い。黒糖が好きなんですよね。あの独特な風味とコクが食べたくなる時があって。
すき焼きを作る時は、必ず黒糖を使います。オーケーストアで奮発して買ったA5ランクのお肉を卵にたっぷり潜らせて、どんぶり飯にバウンドさせて頬張る。口いっぱいに広がるお肉の旨味と黒糖の香り。
そういえば近頃、すき焼きを食べてないなと考えていると、
「よろしかったら、ウチは1パック2個入っているので、白砂糖と黒糖を1個ずつにしましょうか?」
これぞ人情! この気遣いが嬉しいじゃありませんか。ここは甘えて、それでお願いしますと頼んだところ、
「ごめんなさい。よく見たら黒糖、売り切れていたわ」
なかったんかい……。ただ、その気遣いが嬉しい。これも人情! 念願の水無月を手に入れて帰宅する。
もともとは京都のお菓子で、氷が高価だった時代に氷を模して三角に切った形。見た目にも涼しげ。もちもちとしながら歯切れの良い口当たりで、上に乗っている小豆がふっくらしていて美味しい。
6月30日は、1年の残り半年の無病息災を祈願する神事で、水無月を食べるんだそうです。
