帽子

三遊亭好二郎の「座布団の片隅から」 第3回

「何か足りない」の正体は、たぶん理性

 まず、タンスの服をすべて出してみて、私は絶望した。何を着ればオシャレになるのかわからない。受験には答えがあったのに、ファッションは誰も正解を教えてくれない。“服を着る”ということが、こんなに難しいと感じたことは今までなかった。

 精一杯考えた結果、黒い服なら大外しはしないだろうと考えて、上着は母親が買ってきた黒いシャツ(大きく“BAD BOY”と書かれている)、下はシャカシャカした素材の黒い七分丈パンツ。そして小・中学と野球少年だった私は、腕に自分にとってのヒーロであるイチロー選手の黒いリストバンド(左にICHIRO、右に背番号の“51”と書かれたもの)を装着した。

 これだけですでに壊滅的なダサさなのだが、もはや誰にも止められない。そして、私はふと思ったのだ。「何かが足りない……。そうだ! 帽子だ!」と。

 もはや、何か足りないどころではないのだが、当時の私は狂っていた。そうして、その頃流行っていたメッシュキャップを買い足すことにしたのだが、普通のキャップでは無難になってしまう。

 隣町の高校生に一発カマしてやりたい。ギャフンと言わせてやりたい。俺は今日からキムタクになるのだ。そのためにはメッシュキャップに何か+αがほしい。そう考えた私は、通販サイトで帽子を探すことにした。そしてついに見つけたのだ。

 メッシュキャップのつばの部分だけがサンバイザーみたいに“UVカット素材”になっている、超かっこいいキャップを!!!

完璧なファッション!!!