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社会派講談の旗手 神田香織(後編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」第7回
- 講談
若手育成と定席復活への願い
2024年に受賞した「澄和平和活動賞」は、一般財団法人澄和が、長く続く民間の平和賞をという思いで設けた「澄和Futurist賞」とともに、平和活動に邁進する方を対象とする人へ贈られることになった新設された賞である。同時に受賞したのは指揮者の佐渡裕と漫画家の高橋陽一。そして、2025年(令和7年)からは所属する講談協会の副会長に就任。平和とともに永続を望む、講談界のこれからについて尋ねてみた。
―今年、講談協会副会長に就任しましたが、今の講談界にどんなことを思っていますか。
香織 実は若手、それも女性で優秀な人が沢山いるんですよ。法人化もするので、若手中心に動いてもらいたいので、そうした人にお願いしてくださいと言ったんですが、年功で行くと私になるそうなんです。私は古典をあまりやってきませんでしたが、それでも『三方ヶ原軍記』も教わっていますし、『佐野源左衛門の駆けつけ』も読んでいます。修羅場とか歌い調子とかは大切だと思っていますが、自分の路線を進んでしまったので、私は講談協会の亜流であり続ける、そんな存在であると思っていたんです。だから「私が副会長?」って、周りの人も最初は笑っていました。
今、宝井琴調会長が頑張っていらっしゃいますから、頑張っている若手を引き上げるという意味でも、そして法人化という大事な目的のためにも、できることはやらせていただき、次の若手に繋いでいくためにお引き受けしました。織音にしても春陽さんにしても、琴鶴さんや貞弥さんにしても、ある時期からみなさんが切磋琢磨して、そうすると後の人もそれについていきますから、若手が実力をつけてきたのは嬉しいですよ。今、前座さんも多いでしょ。
―一時期、講談協会には14名いました。
香織 前座さんが入ってこない時期もあって、伊織の時も来なくて大変だったのに。私の講談教室の生徒さんでもプロになりたいという人がいたんですけど、年齢が年齢だからと、ちょっとね……。
―以前は古典講談ばかりを聴いていた時もありましたが、今は若手や女性講釈師が今の世の中であったり、自分の目線でとらえた講談を読むようになってきています。でもそれは講談の原点であり、時代的に一番講談界が元気のなかった頃に、あれこれと工夫をして講談を見せた先生たちが切り拓いていった道であるとも思っています。
香織 ありがとうございます。今後のことで言えば、あとは講談の定席がほしい! せっかくこれだけ若手が育ってきているのですから、やはり定席がほしいですね。