2025年9月の最前線 【前編】 (聴講記:講談協会「戦後80年、戦争と平和をかたる」)
「講談最前線」 第7回
- 講談
瀧口 雅仁
2025/09/13
戦争と平和を読んだ、一龍斎貞花(左)と宝井琴鶴(右)
講談はいつも面白い。そして講談はいつも新しい――。講談の魅力って? 講談ってどこで聴けるの? どんな講釈師がどんな講談を読んでいるの?と、それにお応えするべく、注目したい講釈師や会の情報、そして聴講記……と、講談界の「今」を追い掛けていきます。(2025年9月の前編/後編のうちの前編)
戦後80年、講談で振り返る「戦争と平和」
今年は昭和100年であり、戦後80年でもある。
世界に目を向ければ、政情不安が多々見られることもあってか、昭和や戦後を振り返る企画が多く開催されている。講談界では、講談協会が8月の新宿講談会(定席)で「戦後80年、戦争と平和をかたる」といった企画公演を開いた。当日の番組を紹介すると、次の通り。
宝井琴人 「山中鹿之助・獺退治」
田辺凌々 「猿飛佐助・真田幸村との出会い」
神田伊織 「東京大空襲」
神田香織 「お菓子放浪記・旅芸人との出会い」
(中入り)
宝井琴鶴 「満州引揚げ密使 ~丸山邦雄」
一龍斎貞花 「象のトンキーとワンリー」
前講二人の後の四人の演者が、公演名の通りに「戦争と平和」をテーマにした講談を読んだ。企画の提案者は、当ウェブメディアの7月のインタビューにご登場いただいた神田香織で、そこでも取り上げた「お菓子放浪記」を演じた。
神田香織「お菓子放浪記」の反戦のメッセージ
シゲルという、決して恵まれた環境にない少年が「お菓子は楽しいものなのに、こんなものはお菓子ではない」と、戦前・戦中に甘いお菓子を夢見続ける。戦争そのものを扱う話ではないが、一人の人間として、生きる尊厳と夢を求め続ける物語だ。
もちろん、当時を生きる登場人物の中には、反戦の気持ちが見られる。今回の話で言えば、シゲルが出会う旅芸人の女形に召集令状である赤紙が届いた時に、「人を殺(あや)めることはできない」と自らの命を犠牲にしての抗議行動を行う場面。
さらにシゲルが「無糖紅茶 お菓子付き」という貼り紙を見つけ、胸を躍らせて喫茶店に入るも、出てきたお菓子を前に「インチキは嫌だ!」と叫ぶ場面は、戦争に対する庶民への思いの比喩と見ることもできよう。
戦争という題材を前にした時、直球で攻めるばかりではなく、香織の熱くもあり、丁寧に読み進める姿が、かえってジワリとにじみ出てくるように反戦を感じさせ、犠牲になるのはいつも一般市民であるということを示し得た。
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