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2025年8月の最前線 【後編】 (講談入門① ~最初に“生で”聞くなら、どうしたらよいか)
「講談最前線」 第6回
- 講談
[2] 女性講釈師の高座に接する
[1]でも記したが、都内の寄席を中心に、他の講談会などでも女性講釈師の高座から入るのもいい。
今の時代、ふさわしくない表現かも知れないが、女性だから優しい、かつ易しいというばかりでなく、語学でもなんでもそうだが、女性の声は耳や頭に入りやすく、安心感を覚える。
近年、軍談や連続物に積極的に取り組む女性講釈師も増えてきてはいるが、長く男性中心の社会であった講談界にあって、女性目線や新しい見方を取り入れた新作や古典の世話物(市井に生きる庶民の姿を描いた作品)も多いので、講談の世界に入りやすい。
先に挙げたように、寄席であれば、落語芸術協会には二代目神田山陽(かんださんよう)門下の女性講釈師(陽子・紫・紅・阿久鯉・京子・蘭・伯知など)が多く所属している。『春日局(かすがのつぼね)』『秋色桜(しゅうしきざくら)』『那須与一(なすのよいち)扇の的』といった古典講談に、『カルメン』などの外国を舞台にした作品、夏になれば趣向を凝らした怪談、そして演者の個性が光った新作を聴くこともできる。
お気に入りを見つけられれば、更に聴きたくなるというのも道理で、この人を聴き込んでみたいという気持ちを大事にして、そこから聴き手としての裾野を広げていくのもいい。
[3] やっぱり神田伯山の高座を楽しむ
やはり、今、一番の人気者と言える神田伯山の高座から入るのもいい。
メディアでは、〈最もチケットの取りにくい講釈師〉といったキャッチフレーズを目にするが、それだけみんなが注目している証拠であり、だからこそ、一度見てみる価値がある。
テレビやラジオでその顔や声を知っていれば、普段慣れない高座を前にしても安心感がある。また伯山は当日の観客の反応を確かめながら、その日のニーズに合った話を演じることもあり、更に独演会であれば3~4席演じることもあるので、講談初心者でも気軽に楽しめ、聴き巧者をも納得させるお墨付きの高座を味わわせてくれる。
また、今年に入り、所属する日本講談協会で、「はじめての講談会」という会を深川江戸資料館小劇場ではじめたので、その会をきっかけにするのもいいだろう。

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伯山を聴いたら、次は師匠であり、人間国宝の神田松鯉。そして一門から、他の講釈師へと聴き方を広げていけば、講談の楽しさも比例して増していくはずだ。