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かたばみ日記 令和7年 夏

三遊亭司の「二藍の文箱」 第4回

8月上旬 ~大圓朝、銷夏、怪談

8月2日 土曜日

 14時、薮伊豆総本店。日本橋つかさの会。

 開場前の高座で、弟子の歌坊の『道灌』を聴く。一週間前の稽古で、ここ数日の稽古からなかなか進捗が見られず、やっていないことはないが、どう乗り切ればいいのか少し迷い、あえて時間を空けていた。それが功を奏した。

 15時半開演。今年は昭和の名人十二撰と銘打ち、今回は八代目林家正蔵師匠。師匠にまつわるはなしから『真景累ヶ淵』の『皆川宗悦』を初演、『豊志賀』を再演で。『宗悦』はこの長い噺の発端だが、発端を演ると、やはり続きを演りたくなる。今回は完全に大圓朝の本から補綴した。

8月3日 日曜日

 ひる、釜揚げうどん。玉(ぎょく)を落としたむじな。ここ数日、身体があたたかいものをもとめる。空調の効いた部屋で熱いものを食べる。これも夏。

 仕事から帰宅すると、商店街は盆踊り。盆踊りを見るのが好きな子どもだった。三つ子の魂で、いまだに変わらない。知り合いが生ビールを売っていたので、暑い中、生。おしまいのほうで甥たちが来たので、いくらかおじさんらしいことをする。

 下の子、4歳の甥が羽田の祭禮の時、「あれもダメ、これもダメじゃ、お祭りの意味がない!」は至極名言だった。なので、なんでも買ってやる。

8月9日 土曜日

 友人の命日。6歳からの友人だったが、5年前海に流されて、呆気なく死んでしまった。親友ではあるが、いまだに墓にもその海にも行ってない。

 16時から西荻窪のギャラリーカフェさいのね庵で落語会。3回目の今回は夏らしく怪談の会となった。毎年、深川の雲光院で怪談の会を演るようになってから、いろいろと声がかかるようになった。『真景累ヶ淵〜豊志賀』と『死神』の二席、終演後の宴は噺の雰囲気に反して大いに盛り上がる、怪談のあとはお清めが大切。

 この季節、怪談を演るといつも思う。日本の夏は死者との距離が近い、と。

8月中旬 ~平和、終戦の日、送り火

8月15日 金曜日

 例年、何の予定も入れない、敗戦の日で終戦の日の8月15日は、大田区の平和祈念の花火の日……だった。今年は、日にちをずらすそうだ。この日、みんなで花火を見上げながら、平和ということを考える。8月15日の花火は、大きな大きな送り火のよう。

 長い長い今年の夏の8月も、これにて折り返し。

夕空の暮れゆく前の門火かな

(毎月2日頃、掲載予定)