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スポーツの秋! 落語家がサーフパンツで舞台に立つ日

「かけはしのしゅんのはなし」 第5回

この気持ち、わかってほしいのに

 辛いと誰かに言いたくなる……。

 前座さんと世間話をしている時に、減量していることを言いたくて仕方がありませんでした。私が前座さんの立場だったら、「そうなんですか、大変ですね……」と相槌をうちつつ、心の中では心底、興味はないと思います。それどころか、「そんなことしている暇があるなら稽古しろ」と思うかもしれません。

 それでも、この場で「減量している」と言いたい!!

 考えてみたら、会話の流れで「減量している」と言えれば、問題ないのでは? だったら、どういう流れがいいだろう。理想的なのは「兄さん、痩せました?」 これが一番自然だろう。減量していると違和感なく話せる。言ってほしい。でも、なかなか言ってもらえない。

 話題は最近の楽屋事情になっていて、そこから「痩せました?」とは聞きづらい。それなら、聞きやすくしてあげようと思って、自分の頬を右手でさすってみた。特に反応なし。

 中尾彬さんのモノマネかと思われたかもしれない。

 そんな中、楽屋でお酒を呑む機会が少なくなったという話題に変わって、前座さんから「兄さんって、よくお酒を呑みますよね?」という質問。

 ここだ!――と間髪入れずに、「呑むんだけれども、今は減量中だから呑んでないんだよ!」

 上手くいったか……? ちょっと強引すぎたか……? でも、そこまでの違和感はないんじゃないか。これを受けて、なんて返してくれるんだ?

 「そうなんですか……」

 減量の話題どころか、会話そのものが終わりました。

 最近は、お米よりカボチャの方が糖質が少ないから、腹持ちを良くするために沢山食べている話もできない。鶏のむね肉ばかり食べていると脂質が少なくなるから、もも肉も取り入れているという話から、オススメの食べ方の話題にもつなげられるのに……。

 むしろ、そういった話題に活かされるのを避けるために、会話を止めたのかもしれない。それは正しい。

 これからは、「減量が辛い」というのは胸に秘めて生きていこう。