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私が落語に感動した日 ~学校寄席の桂さんと鶴瓶師匠

「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第6回

熊本の高校生が爆笑した卓越のテクニック

 その高座は15~20分ほどの出番で、マクラと落語というよりは、小噺やダジャレを交えた構成だった記憶があります。『恐怖の味噌汁』というダジャレネタがウケていて、毎週何十本とバラエティ番組を観ていた芸人志望の17~18歳のお笑いヲタクだった服部少年は、「こんなライトなネタでウケるって、すげー!!!」と、正直思いました(笑)。

 芸人になってからは10人を一斉に笑わせることの難しさを痛感し、あの時、1000人近い高校生(お客様)を一気に沸かせた凄さを改めて実感しました。とんでもなく卓越したテクニック!

 当時、高校生だった私を含め、1000人近いお客様は、ほとんどが落語が初体験だったはずです。そんな中で、落語の見方や想像での楽しみ方を伝えた上で、『恐怖の味噌汁』で会場を爆笑に包んだあのステージ。あれは、どんな仕掛けだったのか……。

 20年以上前の記憶と、これまでの約20年の芸歴から自分なりに分析してみると、丁寧に段階を踏んでお客様との心の距離を縮めながら、面白さが生まれる空間を作り出す話芸の力がそこにあったのではないかと思います。

 あの時、来られたのが二ツ目だったのか、真打の方だったのかは分かりませんが、約1000人の落語初体験のお客様相手に、常設の劇場でもない体育館で落語を披露するというのは、なかなかの舞台だったと思います(キャリアのある方からすれば、慣れた場かもしれませんが)。

 そういえば2016年、熊本地震があった年に、同じ高校出身の芸人3組でチャリティーライブを行い、母校の体育館で生徒や先生を前にネタを披露したことがありました。当時は私はコンビで、普段はコントをしていたのですが、その日は地元ネタを交えた漫才を披露しました。

 初めての地元での舞台、しかも母校ということもあり、かなり緊張し、必死で10分間のネタをやり切ったものの、あまり当時の記憶がありません。高校生の時に観た“桂さん”のように堂々とできていなかったと思います(笑)。

もともと酒屋の蔵だった「天聽の蔵」で開催された『かえる公演』。たくさんの地元のお客様に来場いただきました