第四話 「初心者よ永遠なれ」

「令和らくご改造計画」

#4

 それから、どれくらいの月日が経っただろうか。

 都市の片隅に、かつて『寄席』と呼ばれた建物があった。今は博物館になっており、ガラスケースの中にメカウマ計画で活躍した“874K”の頭部が飾られている。

 その前に一人の男が立っていた。黒いコートの裾を風に揺らし、静かに呟く。

 「……また、落語がなくなっちまいましたよ。師匠」

 男は展示室を後にし、誰もいない廊下を進んでいく。その先には、一枚の座布団が置かれた部屋があった。

 金糸で縫われた文様が淡く光り、まるで鼓動のように脈打っている。

 男はその上にゆっくり正座し、目を閉じた。

 「……やり直しだ」

 座布団の縁が静かに光を帯び、空気が震えた。時間の流れが、わずかに逆向きに歪む。