題・ハード

「マクラになるかも知れない話」 第四回

素晴らしい名前

 テーマ案の中に「小春日和(こはるびより)」というのがある。

 かなり前のことでうろ覚えなのだが、私の大師匠(おおししょう・師匠の師匠)三遊亭圓窓の知り合いの方のところに女の子が生まれた。

 「暖かな春の日に生まれた子なので、小春という名前にしました!」という報告があって、大師匠が「ええとね、小春日和というのはね、冬の季語だよ」と言った。これを知ってたとして、私なら言うかどうか迷うが、間髪入れずであった。

 その方は驚いていたが、大師匠が「まあ可愛いからいいよねえ」と続けたので、まあいいかとなった。確かにいい名前である。

 全国にたくさん、春生まれの小春ちゃんいるんだろうな。

最近、撮れた小春日和 in 茅ヶ崎

 私は前座の時は、ひらがなで『まんと』という名前だったが、実はその前に師匠の萬窓から『まん坊』という名前をもらっていた。

 「今日から三遊亭まん坊を名乗りなさい」と『三遊亭まん坊』と書いた一筆箋をいただいた。

 名前をもらうと、急に自分がいっぱしの噺家になったような気がする。やっと仲間入りだ!そういう気分になる。その日の帰り道は、本当にスキップをした。人間は年齢に関係なく、嬉しくなるとスキップをするのだ。

 自分でも驚きだった。

 しかし三日後、師匠に「まん坊いた」と言われた。すでに名乗っている先輩がいたのである。「だから、『まんと』にする。『三遊亭まんと』ね」と言われて、今度は電話機横のメモ用紙に走り書きで『まんと』と書いて渡された。

 「師匠、もう一回ちゃんと書いて……」とは言えなかった。

 でも私の出身地、高知の四万十川(しまんとがわ)から考えてくださった名前なのでしっくりきた。

 後日、お世話になっている方に報告したところ、「多くの文明が川沿いに発展していて、それは大きな川には人が集まるから。なので故郷の川にちなんだその名前は素晴らしいと思いますよ」と言っていただいた。

 ますます気に入って、今日も名乗っている。