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大山詣りに行ってきました

「お恐れながら申し上げます」第4回

落語

入船亭扇太

2025/12/11

ありがたいなと思います

　ロープウェイであっという間に阿夫利（あふり）神社の下社（しもしゃ）に着きました。もちろん、バラバラに座ります。ロープウェイを降りて目に飛び込んでくるのは、大山から見下ろす紅葉の景色です。真っ赤なところ、黄色いところ、まだ緑のところ。その向こうに広がる市街地。さらに奥には相模湾と江ノ島が見えました。素晴らしい景色でした。その標高の高さに少し怖くなりました。

　お社（やしろ）まで階段を登ります。おじさんたちは無言です。参拝するために列に並びます。おじさんたちは黙っています。お詣りを済ませて、お守りを見に行きます。おじさんたちは喋りません。階段を降りてロープウェイ乗り場に向かいます。おじさんたちは静まり返っています。

　ロープウェイに乗って、バス停を目指します。まだ喋りません。ロープウェイ乗り場からバス停に向かう足取りが行きの倍以上に速いです。下りにしたって、速すぎます。バス停に着いて一言。「駅前に飲み屋があったね」。私の体の中から力が抜けていくのを感じました。

　バスが来るまで時間があったので、お手洗いに寄りました。用を済ませて出るとおじさんたちの姿が見えません。まさかと思い、バス停に向かうと、3人仲良く並んでいました。おじさんたちと私の間には大勢のバスを待つ人がいます。合流するのも憚られたので、1人でバスを待ちました。バスに乗り込むと、おじさんたちは仲良く座っています。おそらく、どこで飲むか話し合っているのでしょう。とても楽しそうです。

　伊勢原駅に着きました。私は用があったので、ここで別れました。不満があった訳ではなく、本当に予定が入っていました。ありがたいと思いました。おじさんたちは、伊勢原駅前の飲み屋に入って行きました。その後、どうなったのかは分かりませんが、ずいぶんお酒を召し上がったようです。カラオケにも行ったとか。

　よく考えると阿夫利神社にいたのは20分くらいでした。飲んでる時間は、その何倍もあったと思います。そんなお詣りでも許してくださる神様は、ありがたいなと思います。今度は、ゆっくりお詣りをしたいです。

　もちろん、電車とバスとロープウェイを乗り継いで。

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（毎月11日頃、掲載予定）

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