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旅こそ、己の浅さを知る手段。だから若いうちに出る

「噺家渡世の余生な噺」 第8回

旅の終わりに思うこと

 人は、なぜ旅に出るのか。。知らない場所を知るためだけではない。忘れかけた自分を思い出すためだ。見知らぬ町で笑い、知らない人と語らい、「まだ自分は生きている」と感じる。それが旅の本質だと思う。

 落語家という職業は、笑いを届ける旅でもある。けれど実際は、笑わせながら、自分が癒されているのかもしれない。旅とは、そんな人間の循環を思い出させてくれるものだ。

 老いとは、人生を畳むことではなく、もう一度、ゆっくりとほどいて確かめること。まだ身体が動くうちは、私は旅を続けよう。そしてその途中で、また一つ、噺を見つけるのだ。

西表島 まるまビーチ

(毎月14日頃、掲載予定)