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変わり者が集まっている世界で、「変わっている」と言われた日

「かけはしのしゅんのはなし」 第7回

変わり者が集まっている世界で、「変わっている」と言われた日

友だちの顔を見ると、昔の恥ずかしい記憶が蘇ります……(画:信吉)

春風亭 かけ橋

執筆者

春風亭 かけ橋

執筆者プロフィール

黒歴史は白くならない

 年末が近付いて来て、2025年も終わりが見えてきましたね。年の瀬もいよいよです。

 今年1年を振り返ろうと思ったら結構、思い出せない。忘れっぽいんですよね。学生時代のエピソードとか求められた時に困ります。でも友だちの顔を見た瞬間に、パカッと記憶の蓋が開く瞬間があります。そうすると色々と思い出が蘇ってきます。色々な蓋が開いて気持ちがいいです。

 以前、高校時代の友人と話していたら、

 「梶川(かけ橋の本名)って、前から変わっていたよな」

 と言われました。どういうことかと聞いたら、私が美術の授業で白色の絵の具がなくなって困っていたそうです。友人が白色の絵の具を貸そうかと言ったら、

 「いや、自分でなんとかするから」

 と言って、パレットに赤色と青色と緑色の絵の具を出して混ぜ始めたそうです。

 何をしているかと思ったら、光の三原色を絵の具で再現しようとしていました。もちろん白色になる訳もなく、首を捻りながら混ぜる私の姿が印象に強く残っていたとのこと。

 ……恥ずかしい。

 これが小学生だったら可愛らしくもあり、「光の三原色を知っているなんてよく勉強しているね」と思える話も、丸坊主でニキビ面の学ランを着た18歳がやっているとなると、なんだか情けなさも感じます。もっと秀才エピソードがほしい。

 そういえば小さい頃から、周りからよく『変わっている』と言われていました。クラスのお調子者とも違う、なんだかよくわからないけれども、面白い言動をすることがあったそうです。

 でも、そう言われることは、嬉しくありませんでした。

 周りが笑っている環境は好きですが、自分が面白いことをしようとしていないのに笑われている状況に少し釈然としない気持ちがありました。『変わっている』と言われるのも同じ気持ちになります。世間と自分のズレを客観的に見られないことを、恐ろしく思ってしまいます。

 さらに変わっているような行動を自覚してないからこそ、何をもって『変わっている』かもわかりません。何より『変わっていること』を求められた時に、その期待に沿ったことができないのが辛くなってしまう性分なのです。