師走と義士伝

「コソメキネマ」 第八回

動く忠臣蔵

 忠臣蔵は映画もドラマもたくさんありますが、忠臣蔵の一通りのエピソードを知りたいという方には、1971年(昭和46年)に製作された『大忠臣蔵』というドラマがお勧めです。全52話。大石内蔵助役の三船敏郎をはじめ、豪華キャストが勢揃いで、とにかく面白い。豪華すぎて討ち入りの時にいない人がいるという話も……。年末になると見返したくなる作品です。

 NHKの大河ドラマでの映像化は意外に少なく、1964年(昭和39年)『赤穂浪士』、1975年(昭和50年)『元禄太平記』、1982年(昭和57年)『峠の群像』、1999年(平成11年)『元禄繚乱』の4作品です。

 『元禄繚乱』には、宝井其角(たからいきかく)役で国本武春師匠が出演されています。

 映画もたくさんあって迷いますが、私が一番好きな映画は、1937年(昭和12年)公開の『血煙高田の馬場(ちけむりたかだのばば)』です。私がバンツマこと阪東妻三郎に魅了されるきっかけとなった作品。まだ堀部の養子になる前の中山安兵衛が高田馬場で叔父の仇討ちをするお話。

 バンツマの安兵衛がチャーミングで、とにかく格好良い! あと映画史上に残る素晴らしい走りっぷり。走る映画ベスト10に間違いなく入る作品です。チャンバラシーンも素晴らしく、人々が生き生きと美しい。

 ラストシーン、叔父の元に駆け寄り、熱狂と興奮に満ちた人々に囲まれて、立ち尽くした安兵衛は一人泣くのです。それが胸を打ちます。

2002年に生誕100年で開催された「阪妻映画祭」には通いつめました。23年も前なのか~! ひゃー!

 今年も間もなく終わります。拙い文章で綴ってまいりました『コソメキネマ』にお付き合いいただきました皆様、本当に有難うございます。映画と映画館に愛と感謝を込めて。良いお年をお迎えください。

今回の映画

『血煙高田の馬場』(1937年公開、マキノ雅弘監督、57分)

血煙高田の馬場(戦後改題「決闘高田の馬場」)
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(毎月23日頃、掲載予定)

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