VR落語を始めて1年経った今

古今亭佑輔とメタバースの世界 第7回

VR落語を始めて1年経った今

舞台袖で出番を待つ筆者のもう1つの顔、瑠璃茉莉ruly(古今亭佑輔・提供)

古今亭 佑輔

執筆者

古今亭 佑輔

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軌跡

 先日、ついに2025年最後の定期公演を終えた。2025年1月13日にVR落語を始めて毎月必ず落語会の公演を継続し、あれから約1年が経ったことになる。

 ありがたいことに、毎月の落語会は毎回フルインスタンス(満員)80名様であった。グループ登録者数は早々に1,000人を超えた。つまりそれだけ落語に興味のある人がインターネット上に存在しているということである。

 勇気を出して始めた試みに、いま自分が一番救われている。いつでも人に落語の面白さを共有できる場があって、それはどんな制限も受けない。そんな場所があること自体がありがたいと思う。

 また、多くの方のご尽力があってこそ、ここまで活動を続けることができた。つまり現実世界だけでなく、仮想空間の中にも沢山の仲間や支援者ができたということだ。

 それが少しずつリアルと繋がりつつある。自分の落語会だけでなく、休みのたびに寄席に通ってくれる若者も出てきてくれた。そんな方々から落語が面白いという声を聞くと非常に嬉しい。それが自分の励みでもあり、自然と今後の目標となった。

 2026年は、その活動をさらに推し進めていく予定だ。

エンタメを提供する者の宿命

 エンタテインメントを提供する者として逃れられない宿命がある。

 ――それはお客様の「飽き」である。

 去年と同じことをやっていたのでは、人はついてきてくれない。悲しいことなのだが、どんなに面白いことでも人はすぐ慣れてしまう。そしてそれは「飽きる」ことに繋がる。イベントの企画で大切なのは、情報を常に新鮮な状態でお届けすることである。

 慣れ親しんだ上で楽しんでくれるようになれば落語界は安泰なのだが、近頃の感覚ではどうもそうではないらしい。今までの落語界は特別な付加価値がなくても芸人の芸が素晴らしければ、それだけで良かったし、寄席という空間に娯楽を求めて来てくれた。

 今も世代によってはそういう感覚も残っているとは思うが、若い人にとってはそうではないのが現実だ。世の中には娯楽が溢れかえっていて、分かりやすいものが求められる時代だ。

 自分がVRの世界に慣れ親しんだように、観客の間でも仮想空間でプロの落語が聞けることが当たり前となりつつある。今後はコンテンツ自体に付加価値をつけていかねばならない。

 それがお金をいただき、エンタメを提供する者の宿命である。