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〈書評〉 小金井芦州 啖呵を切る(長谷川憲 聞き書き)
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- 講談
- Books
杉江 松恋
2026/02/19
講談に生き、講談に鍛えられた男の記録
演芸本はこまめに見ていると時折、思いがけないものが刊行されるから油断できない。
ある日『東京かわら版』を眺めていたら、新刊紹介ページに『小金井芦州 啖呵を切る』という本が出ていた。一般書店での流通はなく、「かぶら矢会」などの講談協会主催の場でのみ販売するという。なんとかして手に入れなければ、と思いつつ機会を逸し、昨年末に開かれた「かぶら矢会」でようやく入手できた。
表紙に「六代目小金井芦州(こがねいろしゅう) 生誕一〇〇周年記念」と謳われており、「聞き書き 長谷川憲」と記されている。奥付を見ると発行は「宝井琴調(講談協会)」とある。私が入手したのは2025年10月17日刊行の第2刷だ。
長谷川憲は、1949(昭和24)年生まれ、イベントプロデューサーとして活躍する中で、琴柳、琴星、琴調の宝井三兄弟と親しくなり、講談界との交流ができた。その縁から実現したのが、現在もエキサイトブログで読むことができる「小金井芦州啖呵を切る」の聞き書きであり、本書はその抜粋版だ。上に書いたとおり、六代目芦州生誕百周年を記念して特別に刊行されたものである。
巻末年譜にその生涯は詳しい。六代目小金井芦州こと本名 岩間虎雄は、1926(大正15)年12月21日、浅草区(現・台東区)田原町生まれと戸籍上ではなっているが、実際の生年月日は2月19日だったという。もしかするとこの原稿が当ウェブで配信されるかもしれない日だ。親が出生届を10ヵ月遅らせた理由は、生まれつき病弱で育つかわからなかったためだという。
こどもの頃から講談に親しみ、13歳の時に四代目小金井芦州に弟子入りした。本当は五代目神田伯龍のほうが好きだったのだが、父親が四代目に近かったため、ほかの一門に行くことは許してもらえなかったのである。
つけてもらった名前は「二代目小金井靖州(こがねいせいしゅう)」、内弟子となり、師匠の家の物干し場に座って修羅場読みの稽古をすることから修業を始めた。
1942(昭和17)年、二ツ目格となって「小金井若州(こがねいじゃくしゅう)」に改名している。この事情は、靖州の名前が好きではなかったとあるだけで本書では説明されないが、田辺南鶴編の『講談研究』に出ている。
―― 私は知りませんが、講談の先生の中で口の悪い人が鼠の殿様の二代目二代目というので聞いてみると、前の靖州という人のアダ名が鼠の殿様というのだそうでイヤなり、師匠に頼んで若州と改めました。
このあと“いろいろあって”、1949年に真打昇進及び「五代目西尾麟慶(にしおりんけい)」を襲名、5月の披露目興行は当時浅草の松竹座前にあった演芸会館で行われた。ここは本来、浪曲の寄席だったそうで、口上には憧れの五代目伯龍のほか、浪曲師の木村松太郎、春日清鶴が並んだ。師匠の四代目芦州は、この年の1月に喉頭癌のため亡くなっていた。
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