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かたばみ日記 ~初主任の十日間

「二藍の文箱」 第10回

干物箱から七段目――気づきばかりの毎日

2月12日 木曜日 二日目 「干物箱」

 中入り前、楽屋入り。前日の立ち見は祝日ということもあったが、平日に入っても8割の入り。高座で一之輔が、直前ふたりでテレビを見ながら話してたことを、そのまま喋ってるので、さらにわたしも、そのままのことを高座で喋る。

 噺に入ってから、この噺じゃなかったかな?という箇所が何度かあったが、力を抜かずに演りすごすと、サゲ間際の「ここ」というところで、ドカンと。やはりガマンしてよかった。この噺だった。

2月13日 金曜日 三日目 「火事息子」

 代演の師匠によって、毎日こちらの座る席も変わってくる。今日は楽屋の奥でなく入り口。中入り後、一門の三遊亭小歌師匠が楽屋見舞いに。弟子の歌坊は小歌師匠の前名だ。小歌師匠のお客さんに楽屋連中でご馳走になる。

 この日、高座を10分ほどこぼしてしまう。要は長くなった。お席亭より注意と噺のアドバイス。失敗った(しくじった)というより、お席亭がちゃんと聴いていてくださり、当たり前のことかもしれないが、ありがたくおもう。

 帰宅して、元の音源とマクラの時間を計ると32分と6分。なるほど、きっちり10分こぼれるわけだ。数字は裏切らない。

2月14日 土曜日 四日目 「妾馬」

 初日から田端に所縁のある噺がつづいたので、ここで師匠歌司から習った噺を。楽屋には真打同期の入船亭扇蔵が。毎日、楽屋見舞いの仲間や、目の前の一之輔とくだらない噺をしているうちに、わぁわぁと高座にあがっている感じ。この気の抜け方がありがたい。

 ハネて入船亭扇蔵や20年来のお客さん、初めて寄席にいらしてくれたお客さんと、ちょっといきますか?と。こちらは、川崎の丸大ホールという大衆食堂で、たまたま隣に座ったというだけのご縁。みんなで、大師匠圓歌の愛した岩手屋へ。

2月15日 日曜日 五日目 「七段目」

 楽屋入りすると、代演の橘家圓太郎師匠が林家きく麿兄さん作の噺をしている。ところどころ素材の味がきく麿で味付けが圓太郎というのが面白い。

 この日は日曜日ともあって、代演沢山。主力ばかりの顔付なので、それが抜けるとガラッと雰囲気が変わり、代演の妙でもある。

 五日目までで一番少ない6割から7割の入りであったが、よくよく見ると上野の街にひとが少ない。気づきばかりの毎日だ。