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かたばみ日記 ~初主任の十日間
「二藍の文箱」 第10回
- 落語
三遊亭 司
2026/03/02
三味線栗毛から明烏――情を立てる
2月16日 月曜日 六日目 「三味線栗毛」
午前中、弟子に45分小言。鈴本の高座より長い。少し胃腸にも疲れがみえ、やわらかな伊勢うどんを食べて出かける。ほぼ毎日同じ時間。
この日から、この興行なら絶対ウケるだろうという小ネタのマクラを捨て、柳家小ゑん師匠と一之輔、わたしの前の江戸家猫八さんが作ってくれた高座の雰囲気に乗って、かつ、しずかに噺に入ることに。盛り上がっていた客の気を、ひっぱるように、いわゆる人情噺ができた。圓歌一門にとっては、二代目からの大切な噺を。
昨日の岩手屋もそう、初日もそう、このシバイは11年目の新真打でもあり、またわたしの、28年間でもある。
2月17日 火曜日 七日目 「鰍澤」
弟子は前座会。人間いろいろな顔を持ちながら生きている。軽やかに見えて、しっかりした親の顔があったりと。それで言うと、師匠をやりながら、この10日間高座にあがっている。それはいままでもそうだが、弟子が3月上席から楽屋に入る、いわゆる見習いから前座になるので、なおさらその目が鋭くなってしまう。このタイミングでの初トリは、弟子にわるいことはないであろう。
きょうは長期予報の気温を見て、演るならこの日だと決めていた噺を。笑いのない噺だが、きのうの感覚を信じて噺に入る。
2月18日 水曜日 八日目 「猫の忠信」
仲間はありがたい。弟子の歌坊は、鈴本の高座の前に、はな平から稽古をつけてもらう。ゆっくりと身支度。当日の告知をしたあと、あ、もうこの告知あと2回か。と、急に寂しくなる。祭りは終わりになればなるほど華やかで、さみしい。
ネタは、三代目三木助のお家芸。すこし、この噺をしようと決め過ぎて高座にかけてしまった感があった。ネタ選びで迷ったのは、この日と6日目のみ。
2月19日 木曜日 九日目 「明烏」
千穐楽の朝は噺をさらえそうもないので、「深川ひるま寄席」は、柳家小志んと弟子に支度をしてもらい、午前中に噺を二、三席さらう。
深川の開演10分前に、鈴本を終えたはな平が会場入り、鈴本の様子を少しだけ聞いて高座へ。「あ、そうだ、なに演ろうか」と高座で少し迷う。「いいですね、鈴本へは行かないぞという、強い意志を感じるお客さま」に、客席は笑っていたが、もうみなさん何度か中席に足を運んでくださった方ばかり。むしろきょうは深川へ行こうという、強い意志を持ったお客さまだ。
鈴本は、11年前の大初日でかけた噺を。
楽屋には真打同期の柳家燕弥と先師の甥、五代目三木助が。「お前、ジャマしにきたんだろ?」「ハイ!」。師匠、わたしのトリの楽屋で、ヤスとろくがふざけてますよ? ウソみたいでしょ?
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