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ぼうけんだんきち

立川談吉の「ずいひつかつどお」 第3回

ぼうけんだんきち

絵・フジマリ

立川 談吉

執筆者

立川 談吉

執筆者プロフィール

師匠談志の家にあった、冒険の記憶

 「だんきちかあ、じゃあ『冒険ダン吉』だね」
 「そうなんですよ~」

 落語会の終わりや打ち上げなどで、ご年配のお客様と何度も交わした合言葉のような会話である。

 しかしこれはあながち間違ってはいない。当時、練馬の奥地にあった談志の家には、『冒険ダン吉』の絵が描かれたお皿が大事に飾られていた。王冠をかぶって腰蓑をつけた裸の少年が大きな象に跨り、槍を携えた原住民を従えて楽しそうに片手を振っている構図だったと記憶している。

 昔ながらの素朴な絵柄ではあったが、一枚のお皿の中にいくつもの情報が詰まっている楽しいもので、師匠もきっと冒険心をくすぐられたのだろうと思う。談志が弟子に初めて談吉と名付けた時(最初の談吉は現在の談幸師匠)、『冒険ダン吉』を頭に浮かべていなかったわけがない。さらには、中身はともかく「談吉」という名前自体を好んでいた証拠だとも思っている。全くもってありがたい名前を頂戴したものである。

 『冒険ダン吉』は、1933年(昭和8年)から1939年(昭和14年)までの間、「少年倶楽部」で連載された島田啓三による漫画作品である。日本に暮らすやんちゃな少年ダン吉が、ひょんなことから飛行機に乗り込み、アフリカに飛ばされる話。当時、子どもたちの飛行機への憧れや海外への好奇心を掻き立てたのだそうだ。

 今でいう『ワンピース』のようなものだと言いたいところだが、時代背景を考えると影響はそれ以上だったのかもしれない。ちなみに登場するキャラクターは、ネズミのカリ公、先住民の蛮公、オランウータンと暮らしていた冨士夫などなど、大変にバラエティに富んでいるが、実は私もまだ読んだことがない。機会があれば読んでみたいと思うが、待ってるだけでは機会は訪れない。やはり本を探しに、アフリカに冒険しなくてはいけないのかもしれない。

 今回エッセイのテーマを「冒険」としてみたが、私自身はあまり冒険しないタイプである。居酒屋に入ったとしても謎の創作料理を頼むことはないし、今日は特別だからと、普段飲まないテキーラを頼み、塩を舐めてテキーラを喉に流し込み、ライムを齧(かじ)って「ウ~、テキ~ラッ!」なんてこともしない。大好きなポテトチップスを買う時でさえ、オーソドックスなうすしおやコンソメパンチを選ぶことが多い。

 「なんだよ、冒険ダン吉だろ、ちゃんと冒険しろよ」と思うかもしれないが、持って生まれた性格なので許してもらいたい。

冒険ダン吉(財団法人大阪国際児童文学館 子どもの本100選)