ぼうけんだんきち
「ずいひつかつどお」 第3回
- 落語
立川 談寛
2025/08/28
可能性の獣たちよ、大海原に漕ぎ出そう!
古典落語に冒険活劇のようなものはない。いや、知らない。もしあったら教えて欲しいものだ。
一つだけ挙げるとしたら『一眼国』かもしれない。見世物小屋を生業(なりわい)としている香具師(やし)の男が、珍しい一つ目の少女を探して旅に出る。少女を見つけて捕まえようとしたところ、一つ目の男たちに捕らえられ一つ目の国に連れて行かれて、逆に見世物になってしまう。
落語ではここでオチがついて終わりだが、この香具師がこの後、逃げ出したりすれば一大スペクタクルになるかもしれない。知恵と勇気を振り絞り、牢屋を脱獄し、山の中へ逃げ出すと同じように過去に捕まって逃げ出した香具師と出会う。
そいつについて行くと逃げ延びた二つ目の人間たちの隠れ家にたどり着く。そこに住む長老に元の世界に戻るには、河童の皿、砂かけ婆の砂、ユニコーンの角が必要で、「それらを集めるのじゃ!」と言われ、仲間の香具師と探しに行く。
時には激しい崖をロッククライミングのように登り、時には嵐の中、船を漕ぐ。果たして香具師は元の世界に帰ることができるのか。面白いかどうかは置いておいて、冒険活劇『一眼国』の誕生である。
「人生は冒険か無かのどちらかである」
これはヘレン・ケラーの有名な言葉である。困難に立ち向かい、新しいことに挑戦したヘレン・ケラーが発するからこそ説得力ある名言になる。現状維持は心地が良いが、変化の激しい現代社会においては、現状維持を選ぶほうがより危険なのかもしれない。といっても人間そうそう変われるものでもない。
この文章を我慢して読んでくれた方はとても忍耐強いと思うので、冒険心などなくても良いと思うが、中には少し冒険してみたいなと思う方もいらっしゃるだろう。そういう方には小さなことから始めてみることをお勧めする。普段飲まない飲み物を飲んだり、いつも着ない服を着たり。規模は小さくてもいい、それぞれの冒険があるのだ。
目の前にはどこまでも可能性の海が広がっている。可能性の獣たちよ、今こそ大海原に漕ぎ出そうじゃないか。ちなみに私は泳げないので溺れたらちゃんと助けるように。
(以上、敬称略)

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(毎月28日頃、掲載予定)
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