雀々が残した大提灯

「ラルテの、てんてこ舞い」 第5回

雀々が残した大提灯

突然、見つかった大提灯にびっくり!(画:石渡芙美)

ラルテ

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京都から突然の電話

 不思議なことがあった。

 今年7月6日に行われた京都での桂雀々追福公演。その10日程前、突然、京都新聞社さんから電話を頂いた。聞くと、「社の倉庫を整理していたら、雀々さんの提灯が出てきた。かなり大きく古いもので所有者もわからない。こちらどうしましょう?」という相談だ。

 私が記憶しているだけでも、そのような提灯を創った記憶がないので、「前の事務所関係では?」と聞いてみたところ、それも違うとのこと。「さてさて、困りました。どうします? 問題なければこちらで処分しましょうか?」と提案を頂いた。

 ここであっさり「そうですね。では処分してください」と言ってしまえばそれまでだが、いや、ちょっと待てよ。これは、雀々師匠からのメッセージかもしれない。

 「京都に俺の提灯があんねん。あれ、追福公演につかったらどうや」

 私には、そう思えた。いや、きっとそうだろう。

 そう思うと処分なんてとんでもない。事のあらましと私の勝手な思い込みを京都公演の共催であるオトノワさんに相談してみたところ、そういうことなら会場の正面にどんと飾りましょう!と、賛同して頂き、当日は舞台さん含め意欲的に動いてくれた。

三人がかりで設置される大提灯

 お陰様で、京都府立文化芸術会館の正面玄関に堂々と飾ることができ、倉庫の中で眠っていた雀々の大提灯は立派な披露目を果たすことができた。

 10年以上ずっと京都での公演を共にしてきた仲間であるオトノワさんの想いと、舞台陣の心意気をしみじみ感じた一幕だった。