席亭への道 ~服部、落語に沼る人生

月刊「シン・道楽亭コラム」 第2回

#4 コロナ禍は悪いことだけじゃなかった ~半分隠居生活でも

 ゼツボー的な教育界に見切りをつけて早めに退職、さあ落語ライフを満喫しよう!……と思ったらコロナ禍で外出禁止令、および寄席も木戸を閉めた。

 再びのゼツボーか!……と思ったら「ライブが無理なら、SNSでお仲間作りと配信があるじゃない」とケータイ依存症の娘の言葉に助けられた。

 ケータイは「メールと電話と写真のための機械」だった私に、彼女はFacebookとTwitter(現X)の扱いを伝授、たちまちコロナ禍で喘いでいる落語好きご同輩先輩とつながり、落語人脈が広がっていった。

 この頃、iPadを購入(ケータイでは、婆さんの目には小さすぎる)。YouTubeで桂米朝らの上方四天王、桂文楽や古今亭志ん生らの江戸落語昭和の名人の音源を片っ端から聴く。

 SNSつながりの方から「断捨離するから」とタダでレコード、カセット、文献が続々届くのをもれなく聴く読む。無料配信で“今”の噺家をたくさん知る。

 新米の落語ファンの婆さんは、文字通り浴びるように落語を聴いた。聴いたら書きたくなる。SNSは便利。便利すぎて怖いことも経験しつつ、落語人脈はさらに広がった。

 そんな中、国宝小三治はそっと永眠した。

#5 猪突猛進は生まれつき ~還暦過ぎからが人生

 ステイホーム解除、寄席再開の報。婆さんは腰を上げたら最後、亥年・獅子座の星の導くまま、「落語」と名が付くところなら、どこへでも飛び込みまくった。

 午前中は教職バイト、午後は情報誌『東京かわら版』を片手にあちらこちらを彷徨った。木戸銭の高いホール落語ばかりでは、身上が持たない。私でも手が届き、何度でも通える「お値段以上」の会がたくさんあることもありがたい発見だった。

 そこで出会った、若手二ツ目のキラキラした魅力。教員根性が抜けない婆さんは、彼らに日本の未来を見るのだった。彼らにご祝儀をバンバン切れる金持ちになりたい。お金が転がってないかな。ないからせめて、と今日も軽い財布を持って、芸を聴きに足を運ぶ。

 落語会「月例三三」は欠かさず通い、大御所では、五街道雲助に沼る。気づけばこちらも国宝に!! 婆さんは国宝と共に生きる運命らしい。

 上方にも年2~3回足を運び、ここでも極上の落語を聴いて、SNSつながりの知己と会うのも婆さんの生き甲斐になっている。