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汗と笑いの物語
入船亭扇太の「お恐れながら申し上げます」 第1回
- 落語

高座で、手拭いを財布として使っている時に汗をかいたら…
高座で顔に汗をかかない男の秘密
皆様、初めまして。入船亭扇太と申します。
この度、御縁がありまして、このようなエッセイを書くことになりました。色々と思っていることを書きますが、生意気だと仰る方もいらっしゃるかもしれません。お気に障りましても、若手の二ツ目が何か言ってるなと受け流して頂けますよう、平にお願い申し上げます。
今回は「汗」についてです。私は、高座であまり顔に汗をかきません。一生懸命やってない訳ではないのですが、額に汗する高座はあまり経験がありません。その代わり、着物の下は汗だくです。熱演の証が皆様にお見せできないのが残念です。
一番厄介なことは、手のひらに汗をかくことです。尋常ではない量の手汗をかきます。15分の落語でもはっきりと跡が残る程です。さながら、パンダの顔のようにも見えますが、可愛いものではありません。可愛いと言われたこともありますが、信じられません。
この汗は、着物にとって傷みの原因になります。すぐに腿(もも)の所が汚れて、変色してしまいます。3年前に誂えた単(ひとえ)の着物も、手をつく所だけ変色し始めています。

楽屋の師匠、先輩方からは、「洗える着物にした方がいいよ」と仰って頂きます。私もそう思っています。ところが……。