コーヒーと初恋
「すずめのさえずり」 第四回
- 落語
古今亭 志ん雀
2025/10/26
コーヒーは手を加えるなかれ
10月1日はコーヒーの日でもある。コーヒー業界の年度始めがこの日なんだそうだ。
豆を煎って、挽いて、煮出した汁を飲むという、おそろしく手間のかかることをやろうと考えた、先人の執念には恐れ入る。
きっと、始めは豆をそのまま食べていたのだろう。
そうしたらなんか目が冴えて寝られなくなるし、中にはカフェイン中毒で死んだりなんかして。
それでも彼らは諦めなかったのだ。プロジェクトXか、あるいは講談師のどなたかに、コーヒー事始めと題して取り上げてもらいたい。
落語家がやると「茶の湯」の二番煎じみたいになりそうなのでだめだろう。
これを超える手間なのは、おそらく蒟蒻くらいではないだろうか。
私はコーヒーが好きで、高座に上がる前には、何故か甘い缶コーヒーを飲まなければどうにも落ち着かない。
普段はブラック派なのだが、高座前に飲むものだけは甘くなければいけない。そしてカフェのなんちゃらラテや喫茶店のコーヒー、紙パックやペットボトルのやつではなく、必ず「缶コーヒー」でなければならない。
さていざ飲んでみると、感動するほど旨い!ということは、まあ缶コーヒーなので、もちろんない。
毎回となると缶コーヒー代もばかにならないので、スーパーなどでまとめ買いしたものを持参することもあるが、それでは今一つ気が乗らないのだ。それを飲んだ後、結局物足りなくてもう一本買ってしまう。
おそらく飲むことよりも「自販機で缶コーヒーを買う」という行為そのものが、高座前のルーティンになっているのだろう。
私は喫煙しないのでわからないが、きっと煙草を吸う人もこんな感じで、高座前のひとつの儀式になっているのではないかな。
高座前以外は缶コーヒーもブラックを選ぶのだが、ここで業者さんたちに物申したい。
第一回で、世の中に物申したいことはないと書いたが、ここにあった。世界を牛耳るコカ・コ◯ラ社に喧嘩を売ると、後で苦い思いをすることになるかもしれないが。
コーヒー好きのひとりとして、我ここに起つ。
どうして香料を加えるのだ!
コーヒーの名店とか、匠、みたいな人の名を冠したものにまで、わざとらしい「コーヒーみたいな匂い」が足されている。
違うのだ。私はコーヒー自体の香りを楽しみたいのだ。
志ん朝師匠のDVDを買ったら、やたらカメラワークがうるさかったり、途中がカットされたりしていじくり回されているようなものだ。
そこへ行くとUCCやドトール、ネスカフェ(もう缶はやっていないのでペットボトルだが。ボトルのエクセラは旨い!インスタントのエクセラを溶かしても、悪いがあの味には絶対にならない。インスタントはゴールドブレンド派。ダバダ~)は、さすがはコーヒー専門業者の矜持と言うべきか、香料無添加、コーヒーのみで勝負している。
小手先の改変を加えない、古典落語の名手みたいだ。
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