うなぎとらくごの味
シリーズ「思い出の味」 第17回
- 落語
三遊亭 玄馬
2025/12/13
今も思い出す、懐かしい味と、かけがえのない時間の記憶
幼少期と食育
思い出の味、振り返るとぼんやりした記憶が多い。
母に昔話を聞いてみると、自分が覚えていないことが多々あった。幼少期によく食べていたのが、祖母の作った『岩手しょうゆ赤飯』という金時豆を使った料理。これを小さなおにぎりにして、もりもり食べていたそうだ。
母は千葉、父は岩手。実家は千葉の八街(やちまた)だが、小学校の冬休みなどには、祖父のいる岩手の盛岡まで帰省していた。自分の背丈まで積もった公園の雪を弟と二人占め。雪遊びで冷えた身体をコタツの中で温めながら、指先が黄色くなるまでミカンを食べていた。
先の『しょうゆ赤飯』と言うくらいで、刺身に醤油。冷奴に醤油。醤油の卵焼きにも醤油。醤油が当たり前である。盛岡にいる頃は、醤油がとても身近にあった。
しかし、千葉に移り住むと、そうした醤油中心の生活から離れたからか、それとも母の管理栄養士としての観点からか、濃い味が食卓に並んだ記憶が少ない。母の仕事が忙しい時には、父が料理当番になって「普段は食べられないB級グルメだぞ」と言って男の料理を食べさせてくれた。たまの贅沢というか、男だけの秘密のような感じ。
今でこそ好き嫌いはない方だが、母曰く、保育園時代は『おやつバイキング』の時間でチョコだけをひたすら食べるという暴挙を振るったそうだ。「親御さんからも言ってもらえますか」と保育園の先生。親からバランスよく、ほかのお菓子も食べることを提案されるも、玄馬少年は「好きなものを好きなだけ食べられるのがバイキング」と迷言を残したそうな。この頃からトンチが効いていたのかもしれない。
ほかの子のチョコがなくなるという問題点から、『おやつバイキング』の時間が会議の末、なくなる。思い返すと、名糖の『アルファベットチョコレート』が家によく常備されていた。それでも少年のチョコ欲は収まらなかったのだろう。
その後は、両親の必死の食育のおかげか、チョコ以外にも興味を持ち始める。母親が趣味でケーキやパンも作ることから、小学校の自由研究では発酵をテーマにパン作り。そうした影響もあり、大人になって一人暮らしを始めると、製菓や製パンに手を出すようになる。
料理の基本は、レシピ通りに作るというのが鉄板だが、何かが足りないということがよくある。材料の買い忘れや売り切れている場合など。料理は、このアドリブが面白い。
というのも、仕事が忙しくて誕生日ケーキの用意できなかった母が、普段からおやつとして食べていた山崎製パンの『イチゴスペシャル』という半月型のスポンジケーキ(菓子パンの部類)を二つつなげて円形にし、生クリームを塗り、イチゴを乗せて、即席ケーキを作ったのだ。
当初はそれと気づかなかったが、後になって真実を知らされる。私は、この母の工夫を凝らした誕生日ケーキが好きである。
いま読まれています!
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
「テーマをもらえば考えます」 第12回
スイカの夏
~天どん師匠のスイカへのこだわりから始まる、笑い満載の夏エッセイ
三遊亭 天どん
2026/07/31
シリーズ「思い出の味」 第16回
師匠と香港楼と命名秘話
~緊張と感謝の中で頬張った麻婆豆腐
神田 紅純
2025/12/04
シリーズ「思い出の味」 第14回
馬琴と琴星と琴鶴と琴人と ~師弟の食事はいつもちぐはぐ
~どじょう鍋からサンドウィッチまで。師弟の食卓は、人生の味がする
宝井 琴鶴
2025/10/17
「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第14回
〈書評〉 たぶん、僕のジャム。 (金子学 著)
~中学校を舞台に笑いが連発する短編コント小説集!
笑福亭 茶光
2026/07/29
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった一人の噺家への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「かけはしのしゅんのはなし」 第14回
師匠、もうヨーグルト食べたくないって言ってたよ
~お中元は品物を渡す日ではなく、感謝を届ける日!!
春風亭 かけ橋
2026/07/24
「エッセイ的な何か」 第14回
「生きていてくれ」と思いながら落語をやった夏
~真夏も真冬も、落語は熱い!!!
三笑亭 夢丸
2026/07/22
「二藍の文箱」 第14回
三遊亭小歌という落語家がいた
~忘れないでほしい、日の当たらない道を好む藝人もいることを
三遊亭 司
2026/07/02
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第42回
一途に講談を生きる 田辺いちか(中編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/15
「マクラになるかも知れない話」 第十二回
霊んメイカー
~日常の些細なモヤモヤを、落語みたいに笑い飛ばしてくれる爽快エッセイ!?
三遊亭 萬都
2026/07/25
「かけはしのしゅんのはなし」 第14回
師匠、もうヨーグルト食べたくないって言ってたよ
~お中元は品物を渡す日ではなく、感謝を届ける日!!
春風亭 かけ橋
2026/07/24
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第14回
〈書評〉 たぶん、僕のジャム。 (金子学 著)
~中学校を舞台に笑いが連発する短編コント小説集!
笑福亭 茶光
2026/07/29
「令和らくご改造計画」
第十二話 「荒れるチラシ」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/07/13
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第21回
日常を鮮やかに描く言葉の力 神田茜(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/12/29
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第14回
サッカーワールドカップから人が興味を持つキッカケを考えてみた
~サッカーも落語も人生も。新しい扉を開く勇気をくれる、熱くて優しいエンタメ論
服部 拓也
2026/07/27
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった一人の噺家への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
シリーズ「思い出の味」 第25回
芸とともに受け継がれる一門伝統の味
~人を思い、芸を磨き、心をつなぐ伝統の味をほのぼのと綴った、食のエッセイ
露の 五九洛
2026/07/19
「テーマをもらえば考えます」 第12回
スイカの夏
~天どん師匠のスイカへのこだわりから始まる、笑い満載の夏エッセイ
三遊亭 天どん
2026/07/31
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった一人の噺家への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「令和らくご改造計画」
第十二話 「荒れるチラシ」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/07/13
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第41回
一途に講談を生きる 田辺いちか(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/14
「二藍の文箱」 第14回
三遊亭小歌という落語家がいた
~忘れないでほしい、日の当たらない道を好む藝人もいることを
三遊亭 司
2026/07/02
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第42回
一途に講談を生きる 田辺いちか(中編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/15
月刊「シン・道楽亭コラム」 第15回
彦八まつり、芸協らくごまつり、謝楽祭 ~三大祭を全部巡って見えた、それぞれの魅力
~同じ落語のお祭りなのに、三者三様の魅力が面白い。現地で感じた熱気と空気感をお届けします!
シン・道楽亭
2026/07/10
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第43回
一途に講談を生きる 田辺いちか(後編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/16
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
「講談最前線」 第23回
2026年7月の最前線 【前編】 (講談界の襲名について考える)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/07/17
シリーズ「思い出の味」 第25回
芸とともに受け継がれる一門伝統の味
~人を思い、芸を磨き、心をつなぐ伝統の味をほのぼのと綴った、食のエッセイ
露の 五九洛
2026/07/19
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった一人の噺家への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「令和らくご改造計画」
第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」
~古典派と新作派の溝!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/01/12
「艶やかな不安の光沢」 第1回
謂れなきものたちの飛躍
~年始からとちってしまった芸人の胸のうち
林家 彦三
2026/02/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第6回
運と皆様のおかげです
~人間は弱い生き物です
桂 三四郎
2026/01/01
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第8回
微笑みながら中指を
~笑えて震える、ご近所交流録! マトリックスばあさん、降臨!!
桂 三四郎
2026/02/25
編集部のオススメ
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
「エッセイ的な何か」 第13回
6月26日は、露天風呂の日 →背中側だけ半身浴する友人を見た男の決意
~湯けむりの向こうに、シュールな光景があった
三笑亭 夢丸
2026/06/24
「くだらな観音菩薩」 第14回
烏瑟沙摩明王(うすさまみょうおう)
~叱るより先に、話を聞いてあげたい
林家 きく麿
2026/06/16
「令和らくご改造計画」
第十一話 「塀の中」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/06/13
月刊「シン・道楽亭コラム」 第14回
小学校で10年間、落語を読み聞かせしてわかったこと ~子どもたちにウケた噺ベスト3+番外編
~子どもたちは正直だった。だから落語の本当の面白さが見えた
シン・道楽亭
2026/06/10
「座布団の片隅から」 第14回
旅路(上)
~噺家3人の珍道中! 笑いと涙と二日酔いの落語ツアー前半戦
三遊亭 好二郎
2026/06/07
「二藍の文箱」 第13回
地図にない街、地図にない店
~京都、新宿、上野、浅草、池袋。師匠と行った名店の記憶
三遊亭 司
2026/06/02
掲載記事300本記念
〈掲載記事300本記念〉 柳家さん喬師匠 スペシャルインタビュー【前編】
~小さん師匠の「おめでとう」から始まる新しい年
話楽生Web 編集部
2026/01/25