きゃいのう、崇徳院、ぞろぞろ
「オチ研究会 なぜこのサゲは受けるのか?」 第7回
- 落語
林家 はな平
2025/11/06
二十席目 『崇徳院』(すとくいん) ★★
[ワンポイント] 恋と和歌と人探しが絡み合う、少し変わった落語である。病に伏す若旦那の原因は、上野で一度会っただけの娘への恋煩い(こいわずらい)。残された手がかりは、古い和歌の一句のみ。それを頼りに、熊五郎(くまごろう)が江戸中を駆け回ることになる。観客も一緒に疲れさせることが、この噺の大事なポイントだ。
◆【あらすじ】
大店の若旦那が病の床に臥せってしまう。いろいろ医者に診てもらったが治らない。仕方なく若旦那と親しい熊五郎を呼び、枕元で訳を聞いてもらうと、なんと病気は恋煩いであった。
20日ほど前に上野の清水(きよみず)で出会った美しい娘さんが、「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の」という崇徳院の和歌の書いた短冊をくれたと言う。
この和歌の下の句は「われても末に あはむとぞ思う」で、『今日はここでお別れしますが、いずれまたお会いしましょう』ということだと気がつくが、彼女がどこの誰だかわからないために会うことができず、恋煩いにかかったと言う。
これを知った大旦那は、熊五郎に彼女の捜索を頼む。倅(せがれ)の病は酷くて、五日しか持たないからそれまでに探して来いと言われ、見つかれば三軒長屋がもらえるとの約束。
女房に背中を押された熊五郎は、仕方なく東京中を歩き回って探すが見つからない。和歌を叫びながら探せば見つかるんじゃないかと、三日目にはお湯屋18軒、床屋36軒と探すが見つからない。最後に入った床屋で、その歌を知っているという鳶の頭(とびのかしら)に出会うが…
◆【オチ】
頭が言うには、出入りの大店の娘が恋煩いをしていて、上野の清水で会った若旦那に会いたがっていると言う。これを聞いた熊五郎は思わず、男に掴みかかり、「それは俺が探している娘だ」と言い、相手も熊五郎のことを知る。
二人ともすぐに褒美がもらいたいため、互いに「お前がうちに来い」と掴み合いになり、そのはずみで床屋の鏡が割れてしまう。店主がどうしてくれると怒ると、
熊五郎 「心配するな! 割れても末に買わんとぞ思う」
◆【解説】
和歌にかかったオチなので★★にしたが、「会わむとぞ思う」を「買わむとぞ思う」にしただけで、これも取ってつけたようなオチに感じる。
このオチだが、筆者は変えていて、最後は地語りにして「こうして娘さんと若旦那が再会して、めでたく夫婦になりました。それもこの時、床屋の鏡が割れたのが良かったそうです。それもそのはず、『割れても末に会わむとぞ思う』」と、まぁキザな語りになっている。
せっかくの和歌をそのまま使ったほうが収まりがいいんじゃないかと考えたオチだが、お客様には納得してもらっているように思う。
この噺の肝は、とにかく主人公の熊五郎が血眼になって探す様子で、その大変さが描かれていないと最後に相手が見つかった時の盛り上がりが少ない。なので、お客様も一緒になって探しているような気持ちにさせて、クタクタになっている様子をとにかく出すようにしている。
そのため、夫婦のやり取りを丁寧にやる。相手の娘さんを見つけたら三軒長屋をもらえると女房に伝えた時の女房の喜びをふんだんに入れる。見つかるまで家に帰れない。
そう、この噺は夫婦の噺でもある。
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