第四話 「初心者よ永遠なれ」

「令和らくご改造計画」

#5

 再び、楽屋。でん吉が、興奮気味に先輩へ語りかけている。

 「兄さん、これを使えば、寄席だって連日超満員です!」

 隣で、三遊亭ごはんつぶが苦笑する。

 「……そんなにうまくいくかなあ」

 ──そのやり取りを、誰かが遠くから眺めていた。

 まるでフィルムを再生するように、巻き戻された世界の映像をなぞる。

僕「……ん? さっきから、あそこに誰かいない?」

 顔を上げると、廊下の奥に人影が見えた。ゆっくりと近づいてくる。

 顔を出したのは──通亭まにあ(つうていまにあ)さんだった。前回、スタンガン騒動を起こした前座さんだ。虚ろな目をして、ふらふらと近づいてくる。

僕「え、ちょっと、大丈夫?」
まにあ「で……でん吉兄さん、それ以上は……だ、ダメ」

 言葉の終わりを待たず、彼女の手にスタンガンが光る。バチッという音。でん吉の体が一瞬跳ね上がり、そのまま床に崩れた。まにあは、無表情のまま、彼を引きずり出していく。何が起きたのか理解できず、僕はその場に立ち尽くしていた。

 そのとき、どこからか「やり直しだ」という声が聞こえた気がした。

 ……やはり最近、楽屋の様子がおかしい。

―続く―

三遊亭ごはんつぶ official

(毎月12日頃、掲載予定)