目青不動

「くだらな観音菩薩」 第7回

タッパーに詰まった恋

 後日、彼女から連絡があり、同じお店で待ち合わせをすることになった。

 「これ、良かったら食べてください。結構、美味しくできました」
 「あ、ありがとうございます」

 彼女は縦20cm、横30cm、深さ8cmくらいのまぁまぁ大きめのタッパーを袋から出して、ハニカミながら言った。

 「どうぞ」
 「わー、ありがとうございます。……これ……なんですか?」
 「水羊羹(みずようかん)です」

 満面の笑みで蓋を開け、タッパーにぱんぱんに入った、薄いどどめ色をした水羊羹を私に手渡してきた。

 「うわー、み、水羊羹だー、ありがとうございます」

 私が『運命の人に出会った』と調子に乗っていたので、その人を一目見ようとお店に来ていた友だちとお店の人は、笑いを堪えるのに必死だったらしい。

 しばらくの間、その女性は、きく麿の運命の人、「水羊羹の君(きみ)」と呼ばれていた。

 私は水羊羹が苦手で食べられないけど、頑張って少しだけ食べた。そして、「全部差し上げます」と言われたので、お家に持って帰り、残りは公園にあった蟻さんのお家にグリグリ埋めてあげた。

 その後、彼女は「先生と仲直りしたんだぁ」と嬉しそうに笑っていた。やはり彼女は、先生とおつきあいをしていたようでした。

 水羊羹の君、元気かい? あのタッパーは、台所の棚を開けると、小さなタッパーを入れる大きめのタッパーとして活躍しているよ。

 私の切ないハートブレイクを聞いていただきました。ご清聴ありがとうございます。