落語家の夢

「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回

いた~!

夢なまはげを打ちのめしたのは文枝一門だが

瀕死の夢なまはげを救ったのもまた文枝一門だった。

ゆ、夢のないやつはいねが……。

「夢ないっすね~」

い?

「欲しいもんとかもないんすよ~」

いね?

「ほんま金持ちになりたいとかもないんすよ」

いねがーーーーー!!!!!!

夢のないやつがいたがーーーーーー!!!!!

「まじ夢とか、ないっすね~」

と、濁った黒目がちの弟弟子「桂三実」は目の前のサムギョプサルを見つめている。

いいじゃん!!!

全然キラキラしてないじゃん!!!

夢なまはげの旅がついに終わりを迎えた!!

こんな近くに僕より夢のないやつがいたとは!!

ただ、桂三実は昨年、NHK新人演芸大賞で優勝し、大阪の賞レースをたくさん取っている有望株だ。

野心には満ち溢れてるに違いない。

「いや、野心っていうか賞レースは単純に好きで楽しいんで出てるだけなんです」

確かに賞レースは楽しい。

出番前のアドレナリンの出る感じ、前でウケてる人を見ている時の血のたぎりよう、勝った時の高揚感、負けた時の絶望感。

他の落語会では味わえない興奮がある。

「ただ、賞レースが全部終わったら、なんもないんすよ」

いねが~!!!!

「賞レースなくなったら、何を目標にすればいいんすかね?」

いねが~!!!!

夢のない僕が夢のない弟弟子を見つめ、

64歳で怒られている兄弟子が、他の一門に夢を与えている。

なんという一門だ……。

一筋の光

僕はいやだ!!!

やっぱり夢が持ちたい!!

キラキラしたい!!

なんか欲しいものないか!!!

なんでもいい、何かないか?

考えろ三四郎!! 俺の目は、まだこんなに濁っていない!!!

あるだろ!! 何かが!!!

その時、一筋の光が差し込んだ。

コロナ自粛の時に見ていた

山奥の古い民家をDIYでリフォームして自分好みの別荘に仕立て上げるというYouTubeチャンネル!!

あれだ!!

都会の喧騒を離れ、閑静な山奥で、何年もかけてリフォームし

時には挫折しそうになったり、業者の手を借りようかと考えたりしながら少しずつ自分好みの別荘に変えていく。

最高やん!!

夢やん!!

もしかしたら温泉が引けて露天風呂もできるかもしれない!!

庭にはコテージ型のサウナを置いて、湧水で水風呂を作ろう!!

いやもうプールにしていっぱいキラキラの照明置いてナイトプールにしてしまうのはどうだ?

ナイトプールで女子をはべらせながらコロナビールとかZIMAとか飲んで下品に笑うんだ!!

いいじゃん!!

夢あるじゃん!!!

そうだ、この夢が叶ったら三実を別荘に連れて行って賞レース対策合宿をやろう!!

僕の夢が後輩の夢とリンクしている。

素敵すぎる!!