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優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(中編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第19回

師匠の言葉

一邑 講談氷河期でしたね。一人もお客さんがこなくて、入れ掛け(入場料を返して帰ってもらう)もありました。たまに師匠が客席に入ってきて聞いたりすることもあって……。今の若手は勉強の場が沢山あって、うらやましいなあと思います。

 お客さんを増やすために協会でご贔屓連(ひいきれん)を作ったんですが、あれ、最初は年会費3,000円払えば、あとは一年間タダで入場できたんです。だから客席がいっぱいでも、上がりは……。このままでは破綻すると私が会計係になって意見して、それから入場料を取るようになって、最初は300円、私の真打昇進時のご贔屓連割引は500円でした。今はやっと2,000円になりました。

一邑 9・11の年でしたが、(田辺)東鶴兄の招きで一緒にロサンゼルスに行ったことがあるんですが、ああいう風貌でしょ。ボディチェックで引っ掛かってました(笑)。

一邑 私は暗かったので、師匠には悲愴に見えたのか「一邑君はいい加減にやることを覚えたほうがいい」と言われました。あと、「講談は品が良くないとダメなんだよ」とも……。

一邑 話すと言っても、師匠が一方的に喋ってますから。喫茶店で会って、今、自分が取り組んでいるネタについて話して、師匠の話のわずかの合間をぬって、「師匠すみません、そろそろ帰らないと……」と切り出すのが大変で……。それが印象に残っていますね。