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〈書評〉 8番出口 (川村元気 著)

「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第6回

子供だけに見える世界

 深川江戸資料館に近いA3出口を探し、地下通路の案内を見ながら歩いていると、「あれ?」と、不意に息子が足を止めた。地下通路の天井を見上げている。

 天井には、蛍光灯がどういう理由でそうなったのか? なんとも歪な並びで取り付けられていた。

 「……8番出口だ」

 息子がぽつりと呟いた。『8番出口』とは、ゲームのことだ。

 主人公が地下鉄の地下通路を歩き、その通路の途中に「異変」(ポスターのイラストの目が動いていたり、毎回通路で横を通り過ぎるおじさんの様子に変化がある等)を感じたら道を引き返し、何も異変を感じなければ、そのまま進む。その選択が合っていれば、出口の案内が0番出口から数字が上がっていき、8番出口まで到達すれば、地上に出られる。間違っていれば、また0番出口に戻る。

 8番出口に到達するまで、それを永遠に繰り返す。ウォーキング・シミュレーターゲームと言うらしい。当時、その動画がYouTubeにたくさん上がっていて、息子も興味を持っていた。後にゲームも購入した。蛍光灯が歪に並んでいるのも、8番出口の異変の1つらしい。そして、そのモデルになったのが清澄白河の駅らしいのだ。

歪な並びの蛍光灯を見上げる息子

 子供は周りの風景をよく見ている。この世界のルーキーなので、まだ目新しいものがたくさんあるのだろう。また大人とは目線の高さが違うので見えている世界も違う。以前、理由を聞いて「なるほど」と頷いたことがある。

 息子は町の銭湯が嫌いだ。でも、大きい風呂は好きらしい。じゃあなぜ銭湯が嫌いなのか尋ねると、

 「おっさんのちんこばっかり見たくないんだよ!」

 自分から見ているんじゃなくて、ちょうど視界に飛び込んでくる高さにそれらがあるのだ。なるほど、確かにすごく嫌だ!

 子供の世界も大変だ。突然、目の前に現れた8番出口に興奮した息子に記念撮影をせがまれたのは言うまでもない。