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変わり者が集まっている世界で、「変わっている」と言われた日

「かけはしのしゅんのはなし」 第7回

変わり者の世界の優等生?

 そういった最中に落語に出会い、「落語家になる人は、世間から見たら『変わっている人たち』ではないか」と思っていました。

 だから落語家になった時に、世間の人から『変わっている』と思われても、「自分は落語家だから」と自身で受容できることがとても嬉しかったのです。

 やがて、楽屋入りをして寄席で一生懸命働いていて3ヵ月が経った頃、末廣亭の楽屋で前座仲間の兄さんに言われました。

 「お前、変わっているな」

 とてもショックでした。どうしてそう言われたか全く覚えていません。変わり者が多く集まっている落語界でも、「変わっている」と言われたことへの衝撃は忘れることができません。むしろ変わり者の世界で、変わり者と思われているのは“健全”なのでしょうか。私は自分のことをマトモな人間だと思っています。

 ただマトモな人間は、エッセイで自分はマトモだと書かないでしょう。

 そういえば子供時代は、自分は結婚ができないと思っていました。なんでそう思っていたんだっけ? 昔から人とコミュニケーションを取るのが苦手だったからかな。自己肯定感が低くて、人から褒めてもらっても『お世辞で言っているに違いない』と思う性格だったので、何より関係性が発展的にならない。

 これは“健全”ではないですね。

 今はそういった考えは変わりました。褒められたことは満額で受け取ります。お世辞であっても、褒めることを言ってもらう行為に関して否定するのは失礼でないかと思ったからです。

 あと、『この人は口では褒めているけれども、本当はこう思っているんじゃないか』と考えることは不毛であり、そうだとしてもどうでもいいし、何よりそういった考えを続けると疲れます。いかに自分の心地の良い間合いで過ごせるかが大事。

 何も考えずに過ごす時間って、必要ですね。