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雪のココア

シリーズ「思い出の味」 第19回

そんな入門したて、見習いの頃
依存状態に近い楽しみがあった。
パフの入ったチョコレートが木の菓子盆に入っていて
なんと私も食べてよかったのだ。

掃除の合間にそのチョコをつまんでいた。
ひとつひとつ包装されたタイプだから
連続で食べるとゴミ箱にその包装が増えるわけで
連続で食べたのがバレないように
見た目、立錐の余地もないゴミの中へ手を突っ込み
一番下の方へ包装を沈めて証拠隠滅した。

そのチョコの商品名は思い出せないが
修行がはじまってから数ヶ月
私にとって唯一の糖分だったこともあり
とにかく夢中だった。

それが弟子入りから半年くらいで廃止になる。

みんなでつまむものだと思い
申し付けられた夕飯の食材の買い物の際に
気を利かせたつもりで
師匠の財布から“勝手に”それを買ってきてしまったのだ。

勝手なことをしたら怒られるのは当たり前で
その日以来、木の菓子盆からチョコは姿を消す。

糖分を欲するようになった私は
師匠宅の庭の草むしりをしながら
向かいにあるコインランドリーに設置されている
色褪せた自販機を見る日々。

“サイダー”は糖分があるだろう。
“コーヒー”は無糖でなければ、確実に糖分は入っているだろう。
中でも“ピーチネクター”は値段が他より高く(錯覚だろうか?)
私にとって存在感があり、タレント性を帯びていた。

あれらは抜け出して買いにいけるはずもなく
ただただ眺めるのみだった。

日暮里の落語会にカバンもちでお供をした際
師匠に晩御飯代だと言われ、千円札をいただいたことがある。
その会場のある建物の一階にパン屋があり
菓子パンが売っているのが目に焼き付いた私は
コンビニに行ってお弁当を買わずに
即そのパン屋へ行き、千円分の菓子パンを購入。
師匠は「君はそれが食べたかったのか」と
あきれながら笑ってゆるしてくださった。

次の日、頭がスッキリしていて
「糖分ってやっぱり脳に影響を及ぼすんだ」と
身をもって知ることができた。