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鹿芝居狂想曲 ~しろうとしばいはおおにぎわい~

「すずめのさえずり」 第八回

 そして、当然のことながら自分の台詞しか覚えてこない。誰も喋らなくなったら自分の番かな、ってなものだ。そりゃ会話もキャッチボールもあったものではないのです。イメージとしてはどちらかというと、卒業式なんかで一言ずつ喋るアレ(たのしかったー、うんどうかいー。みたいなアレ。今もやるのかな)に近い。

 馬生師匠の鹿芝居では、踊りの師匠がきちんと本格的な顔(化粧)をしてくれていたのだが、我々は予算の都合により自分でやる。白粉を塗る刷毛(はけ)は前回公演が終わってからそれっきりなので、もうバリッバリである。まずこれをほぐす。それから見様見真似で塗りたくっていくのだが、はっきり言って一回目の本番は「お互いの顔に見慣れるための時間」である。

 ゲネプロ(衣装、小道具、化粧など、まったく本番と同じようにやる最終リハーサル)? そんなものあるわけがない。

 明るい本番の舞台で、初めて相手役の顔を見てまあびっくり仰天。との粉(肌色っぽい白粉)はブレンド具合がわからないので昼と夜で顔色が違うし、単純にいい形をしたい人たちの集まりなので、白塗りじゃなくていいキャラまでがやたら白くなりがちなのも、鹿芝居ならではの特徴である。大駱駝艦(だいらくだかん)じゃないんだよ。

 権助芝居なんかのマクラで、「花道から本舞台にかけて、蓑(みの)を着て鉄砲担いだ勘平が三十六人ズラーッ」というのがあるが、今度それを言ってみようか。

 そして本来は一人ひとりの頭に合わせて作る鬘(かつら)だが、我々は予算の都合により既製品である。制作を手伝ってくださる方がどこで見つけてくるものか、ネットに出ている踊り用の中古鬘を見つけてきてくれる。だが予算の都合により人数分はない。

 主役級の女形のみがホンモノの鬘、あとはパーティーグッズにあるようなゴム鬘。見ていると、ああこの人の手前で制作費が尽きたのだなあ、という事情が垣間見えて面白い。今回初めてゴム鬘でやったが、いやあ楽だったなあ。

 でもあの、本物の歌舞伎と違って我々は衣装は自前ですからね。まあ予算の都合ですが。

 ないない尽くしの令和鹿芝居であるが、今回は制作さんのご尽力で、長屋の書き割りになっている後ろ幕が登場した。大道具を建てる予算などあるわけがないので、これ一枚あるだけでいつもの高座が劇空間に早変わりだ。これは当分裏長屋が舞台の演目が続くということかな。文七元結とか。

 鹿芝居メンバーの二ツ目さん、真打昇進のときにあの後ろ幕を使ったらいい。とってもわびしい感じが出ているので、ちょっとこれ、私がなんとかしてあげなきゃ!とお客様が思う……かもしれないよ。