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〈書評〉 小麦畑できみが歌えば (関かおる 著)

「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第9回

〈書評〉 小麦畑できみが歌えば (関かおる 著)

美しい文章からは、まるで音楽が聴こえてくるようだ

笑福亭 茶光

執筆者

笑福亭 茶光

執筆者プロフィール

遠くへ響け、まだ見ぬ誰かへ

 ボイストレーニングに通っている。

 『新テニスの王子様』というアニメで、「遠野篤京(とおのあつきょう)」という高校生の声を担当させてもらっている。歌うこともあるため、少しでも歌が上手くなれたらとレッスンを受けることにした。

 トレーナーは、ソプラノ歌手の内田智子先生。

 まず、『歌は身体全体で歌う』『身体は楽器だ』ということを教わる。それから発声の指導をしていただくと、たしかに歌手にとって自分の身体そのものが楽器なのだということを痛感することができて、とても面白い。

 歌うために『姿勢』は、とても大事だ。

 普段の生活の中でとっている姿勢とは違い、歌うための声が出やすくなる正しい姿勢がある。どうしても人間は頭蓋骨が前に出てしまうらしい。その頭をしっかり身体に対して垂直に持ってこないといけない。

 そして、この正しい姿勢というのが、まぁ作れない。違和感がすごくて姿勢をキープできない。

 この姿勢をとった瞬間、頭の中にTHE HIGH-LOWS(ザ・ハイロウズ)の『日曜日よりの使者』が流れ出し、脳内で正しい姿勢をキープした自分と重なったアシモ(ホンダの二足歩行ロボット)が歩き始める。初めて正しい姿勢をとったアラフォーあるあるだ。

 発声をしながら、先生に何度も注意されてしまう。

 「茶光さん、頭が前に出てるから、両手の親指で顎の下を押して頭を持ち上げて! 頭を持ち上げたまま声出して!」
 「あーーーー」
 「違う! まだ頭が前に出てる! もっと親指に力入れて頭を持ち上げて! はい、声出して!」
 「あ~~・・・」
 「茶光さん! そこは頸動脈! そこは押しちゃダメ!」

 自分の手で自分の首を絞めて、死ぬところだった。ボイストレーニングの指導中に落語家が不審死を遂げてはいけない。『ボイストレーナー殺人事件』として迷宮入りしてしまったのでは、先生の経歴に傷をつけてしまう。気をつけなければいけない。