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第二話 「集まれ! 蘊蓄おじさん」

「令和らくご改造計画」

第二話 「集まれ! 蘊蓄おじさん」

絵:大熊2号

三遊亭 ごはんつぶ

執筆者

三遊亭 ごはんつぶ

執筆者プロフィール

#1

 落語には、新しいお客様が必要だ。

 「今日、はじめて落語を観に来ました」という方には、客席で快適に楽しく過ごしていただきたい。

 しかし現実は、そう簡単ではない。当日の演者の力によるものならまだしも、新規ファンは残酷にも、いくつかの“洗礼”を受けてしまうことがある。

 その代表例が、落語会・寄席に蔓延(はびこ)る「蘊蓄(うんちく)おじさん」だ。彼らは、一人で来場した客に近づき、「寄席は、よく来ますか?」と声をかけ、そこから「僕はね、昔はよく……」「最近の落語は……」と上から目線で語り出す。落語にまつわる蘊蓄や、自分の落語観を延々と披露するのだ。現代的に言えば、マウント行為のような側面もある。

 正直なところ、僕は「そんな人はもういないだろう」と思っていた。もしくは、とっくに絶滅したものだと。いまやUMA(未確認動物)の目撃情報のような都市伝説だと信じていた。

 けれども、どうやら彼らは、一人客の女性の周辺に特に出没するらしい。先日、女性のお客様数人と話していた際に「私は、しょっちゅう声をかけられます」「私も」「私も」と、ほぼ全員が蘊蓄おじさんに遭遇していることがわかった。

 これは知らなかった。……まずい。

 せっかく興味を持って来てくださった新規ファンが、そんな場面で落語に悪い印象を抱いてしまうかもしれない。もう、あ○ね噺のアニメ化も決まっているというのに……!

 そう、落語を広める戦いの舞台は、高座の上だけではないのだ。

第二話 「集まれ! 蘊蓄おじさん」――