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コーヒーと初恋
「すずめのさえずり」 第四回
- 落語
古今亭 志ん雀
2025/10/26
画:原田みどり
モップの裏から始まる初恋
毎月、編集部からは様々なお題の候補が送られてくる。
季節の風物詩(たとえば10月なら食欲の秋、スポーツの秋であったり、文化祭などの学校行事であったり)と、後は何々の日、というリストもあるのだが、これが実に幅広く、眺めているだけで面白い。
豆腐の日(10月2日)、登山の日(10月3日)、トートバッグの日(10月10日)など、その多くは単純な語呂合わせによるものであるが、熟睡の日(10月9日)などと言われると、熟睡しなければ、と緊張して逆に眠れなくなりそうである。
アントニオ猪木の日(10月1日)は、猪木氏の命日がその日だからだそうだが、燃える闘(10)魂アントニオI(1)noki、の語呂合わせでもあるらしい。
いやいやちょっとそれはさすがに、無理がないですか。落語の「お材木(お題目)で助かった」とか「大工は棟梁調べをご覧じろ(細工は流々仕上げをご覧じろ)」というオチくらい無理がないですか。命日なのだから、それでじゅうぶんではないのですか。
初恋の日(10月30日)というのもあって、また無理やり何かにこじつけやがって、と思ったら、島崎藤村が「初恋」という詩を発表した日にちなんでいるという、わりと由緒ある記念日だった。
ちなみに正岡子規が「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」を詠んだ10月26日は「柿の日」だそうだ。
これ、私はずっと一茶か芭蕉の句だと思っていた。わりと新作だった。
ただ、初恋のような繊細なものに記念日を作られると、それ以外の季節の初恋は、何か初恋と呼んではいけないような、ヨコシマなもののような、そんな気がしてしまうのだが考えすぎだろうか。
私の初恋は保育園のとき、名前は忘れたナントカちゃんであった。
どうにかしてナントカちゃんの気を引こうと考えた私は、壁に掛かっていた掃除用のモップの裏側を、しゃがみこんでじっと覗く、という奇行に出た。
「何してるのー?」
はたして、ナントカちゃんは話しかけてきた。やったぜ!
だが、モップの裏に溜まったホコリを見ていただけである。そこから女性をエスコートする会話に繋げるのは、保育園児には無理であった。
きっと誰にでもある、掃いて捨てるような幼いあの日のエピソードだ。
それから四十年を経て落語家になった今でも、モップの裏から話を膨らませるのは無理である。
モップの裏を見てから女性の顔を見て
「綺麗だね」
それじゃまるで落語「厩火事」に出てくる動物園のお見合いだ。
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