うるささや 岩にしみ入る 俺の声

「朝橘目線」 第7回

うるささや 岩にしみ入る 俺の声

高座での筆者。騒々しい様子が伝わってくる

三遊亭 朝橘

執筆者

三遊亭 朝橘

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カレーの甘口が、今日は苦い

 大は小を兼ねる、という言葉がある。

 鍋に残った味噌汁を余らせたってしょうがないので、お椀にザーッと移す時、全部が入りきる前にヒタヒタになってしまい、このままじゃテーブルまで運べないからと、口をつけていくらか啜ったり、具を少し間引いてその場で食べてみたりしていると、自分はどれだけ愚か者なのかと失望する。

 大きい器を選んでおけばもうとっくに席について食していられるものを、目算を誤ったばっかりに口先を火傷しそうになりながら啜ったり、箸で持った具から垂れた汁を拭いたり。思い返すだけで情けなくなる。

 ギリギリを攻めて無駄な時間を費やすくらいなら、最初から大きい物を使うほうが余程良い。大は小を兼ねる、は正しいと思う。

 そして今、これを書いている途中、昼食を摂った。家には自分一人、何でもいいやと業務スーパーで買ったレトルトカレーにした。これが案外美味い。案外、ってのは作り手に失礼か。“これでいいや”のちょうど真ん中くらいに来る。

 レトルトカレーは、必ず湯煎で温める。以前、妻がレトルトカレーを皿に移してレンチンしていたら、謎の爆発をしたことがある。レンジ内部が、かなり悲惨なことになっていた。あれをもし、私がやったとしたら……何を言われるか分からない。

 カレーが減るとか、掃除が大変とかじゃない。私の尊厳がベコベコにへこむくらい、面罵されるに違いない。レンジでチン? それはいかん、カレーは湯煎に限る。

 さておき、ご飯をよそって温めたカレーをかけたら、案の定というか、器にカレーのルーが入りきらなかった。また間違えた! クソ! ……カレーの話の時にクソはいかんな。余ったルーが漏れ出ないよう、パウチの切り口を上に向け、慎重に立てた。立てながら泣きたくなった。

 立てたパウチが安定していることを確かめてから、よそったカレーを少し食べ、残りのルーを器に流し入れた。ルーには“甘口”と記載があったが、精神の不調からか甘さを感じることなく食べ終えた。

 今はもう、自己嫌悪の極致みたいな状態でこれを書き殴っている。