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流麗にして弁舌 一龍斎貞鏡 (前編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第1回

媚びるな

――それを受けてですが、何かこれだけは守れよと言われたことはありますか。

貞鏡 媚びるな、です。講談の美しさや元々のおかしみや楽しみがあるんだから、わざと笑いを取ろうとか、安易にわかりやすさを求めるがために噛み砕きすぎるなということは、よく言われました。真っ直ぐ読めと。

 確かに父親の読みは、マクラもほとんど振らなかったですし、スッと入っていくものでした。それでいて、講談の中の引き事もほとんど入れなかったですが、たまに入れてくるクスグリが、強面なのに恥ずかし気にボソッというのがたまらなく可愛くて、芸人としても人としても魅力的でした。

 七代目貞山も「ニッコリとニッコリでシッコリ。そのシコリが豊志賀の顔に……」って、表情も変えずに普通に読んでいく。そこに何とも言えないおかしさが出てくる。売れていらっしゃる芸人、魅力的な芸人って、どこか何とも言えない可愛いさがあるんですよね。だからお客様を引きつけることができるんだと思っています。

 でも私がそれができるかというとわからないので、今は手探り状態ですが、わかりやすく、でも媚びないような講談を目指して読んでいます。

(以上、敬称略)

貞鏡の祖父である「お化けの貞山」とも
呼ばれた七代目貞山(一龍斎貞鏡・提供)

▼「講談師 七代目 一龍斎貞鏡」ホームページ

https://www.teikyo-ichiryusai.jp

(中編に続く)